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胚培養士が教える!正しい「採卵前と移植後の過ごし方」 | Marbera

川口 優太郎先生

川口 優太郎先生

2019/05/18

患者さまからよくあるご質問

不妊治療、特に体外受精を受けられている患者さまのお悩みとしてよく聞くものに『採卵の前、あるいは移植の後にどのように過ごしたらよいかわからない』というものがあります。

実際、私のクリニックで治療を受けている患者様の中にも、クリニックから電車で1時間もかからない距離に住んでいるのに、採卵の前日に
「昨日は病院の近くのホテルに泊まって、緊張しちゃって、一日安静にしてました」
という方や、
「移植の後は動かないほうが良いってネットに書いてあったので家から一歩も出ないでずっと寝てました」
という方がいらっしゃいます。

確かにネットには、体験談として本当にさまざまなことが書いてあります。
では一体、採卵の前ないし移植の後はどのように過ごすのが一番良いのでしょうか?

答えはとてもシンプルです。
『普段となにも変わることなく、いつも通りに、普通に過ごしてもらうこと』です。

これだけを読むとおそらく「えっ?なにそれ?適当だなぁ‥‥」と思われるかもしれませんが、実はこれがとても重要なことで、しかも、しっかりとした根拠があるのです。
 

今回は、採卵の前および移植の後の過ごし方に焦点を当ててお話ししていきたいと思います。

採卵の前および移植の後の過ごし方で大切なこと

過去にもお伝えしている通り、妊娠が成立するためには、一つの周期において身体のホルモン状態(内分泌系)が安定していることがなによりも重要です。

卵胞を育てて卵子を成熟させる、排卵を促す、妊娠を継続させるといった一連の流れが、規則正しくきっちりと行われている必要があるのです。

安定的にホルモン分泌される状態でいることが大切

部署異動や引っ越しなどで生活環境に変化があったり、仕事や人間関係が上手くいかない、夜なかなか眠れないなどで精神的なストレスがたまっている時に、生理が遅れてしまったり、生理痛がひどくなったりすることがあります。
今までに経験したことがあるという方も多いと思います。

このような体調の変化は、過度なストレスによって自律神経が乱され、ホルモンバランスが崩れてしまい、体内において先述のような安定的なホルモン分泌が行われないことによって引き起こされます。

つまり、身体にストレスがかかるような状況下では、規則正しくホルモンが分泌される状態を作り出すことが難しくなるのです。

また、妊娠してからお母さんと赤ちゃんをつなぐのは『血管』です。
血液を通して、母体から胎児へ酸素や栄養の供給をしているわけです。

ストレスがかかると、交感神経が優位になり筋肉が硬直してしまいます。
この状態が続くと血行が悪くなり、肩や首のこりや倦怠感などが引き起こされるだけでなく、胎児への酸素・栄養の供給もスムースに行われなくなってしまう可能性があります。

そのため採卵の前や移植の後に、
「緊張しちゃって‥‥
という方や、
「ほとんど家から一歩も出ませんでした―」
「ずっと寝て過ごしました―」
という方では、精神的あるいは身体的なストレス状態を自ら作り出しているようなものなのです。


ですので、採卵の前あるいは移植の後には、精神的・身体的ストレスがかからないように『普段通りの、普通の生活』を心がけていただきたいのです。

もちろん、手術の当日は「お風呂は控えてシャワーにする」「過度な運動はなるべく避ける」といったことは、感染症の予防など医療安全上の理由から守っていただかなければなりません。

しかしながら、少々飛んだり、跳ねたり、走ったりしたからと言って、移植した胚が着床しないなどということは考えにくいのです。
事実、私が前に勤めていた施設では海外から患者さまが来院されることもありましたが、移植した翌日から東京観光をして、あちこち歩き回ってから長時間飛行機に乗って帰国しても、ちゃんと赤ちゃんが誕生しています。
ずっと安静にしている必要などありません。
 

採卵の前や移植の後に限らず、普段からストレスがかからないように‷いつも通り‴に過ごすことこそが、安定的なホルモン分泌を促すことにつながり、治療成績の向上へと続いていくのです。
 

ストレス社会の現代においては、実はこれが一番簡単なようで一番難しいことかもしれません。
ウォーキングやストレッチなどの運動、また鍼灸やマッサージのような身体をリラックスさせる方法を、普段の生活に取り入れていくのも良いのかもしれませんね。

川口 優太郎先生

川口 優太郎先生

埼玉医科大学を卒業後、総合病院勤務を経た後に、国際基督教大学(ICU)大学院博士前期課程へと進学。アーツ・サイエンス研究科にて生命科学を専攻。大学院修了後は、加藤レディスクリニック(新宿区)に勤務。同クリニックの系列病院となった中国上海永遠幸婦科医院生殖医学センターへ出向し、病院の立ち上げに携わるとともに、現地スタッフの育成・指導や培養室の運営などを行う。その後、2018年に東京都渋谷区に新規開院となった桜十字渋谷バースクリニックに培養室の立ち上げスタッフとして赴任。培養室主任を務め、指導要領の作製や培養室の運営管理とともに、生殖医療関連のセミナーにて講演を行うなど、精力的に活動。2020年に、総合的な妊活サポート行うリプロダクティブサポートファーム東京を設立し、代表に就任。

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