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「オレ、パパになれるのかな?」もし精液検査結果が悪かったら…今すぐ実践、精子力をあげる3つのポイント | Marbera

川口 優太郎先生

川口 優太郎先生

2021/07/28

「オレ、パパになれるのかな?」もし精液検査結果が悪かったら・・・今すぐ実践、精子力をあげる3つのポイント


これまで、不妊症の原因の半分は男性にあるということ、そして夫婦で一緒に治療に臨むことが重要であることについてお伝えしてきました。しかし実際に、いざご主人が精液検査を受けてはみたものの、なんだか“ビミョ~”な結果だった‥‥という方も非常に多いかと思います。

 

こんな時によく患者様に聞かれるのが「主人の精子データ精子の状態を良くするには、どうしたらいいんですか??」というものです。

実のところ、精子のデータが悪くなる原因については非常に様々な要因があり、何が原因となっているのかによって簡単に改善できる場合とそうでは無い場合があるので、一概に「こうしてください」という答えはありません。

 

まずお伝えしておきたいこととしては、精液検査は、検査時の体調やちょっとした環境の変化などで大きく変わることがあるため、基本的には2~3回の結果を以て評価されることが望ましいとされています。ですので、たった1回だけの精液検査で数値が微妙だったからと言って悲観する必要は全くありません。

一方で、複数回検査をした結果、精子データが不良と診断された場合には、やはり造精機能障害など、いわゆる男性不妊を疑わなければなりません。

 

そこで今回は、精子データの改善についてのお話しをしていこうと考えていますが、最初にとても重要な部分についてお断りをしておきます。

もしご主人が、すでに無精子症や極度の乏精子症と診断されている場合に関しては、個人(民間)レベルで改善を図るのは、ほぼ不可能です。

上記の場合に特に多い症例が、精索静脈瘤(※精巣や精索部に腫瘤が認められることで、造精機能を顕著に悪化させることが知られている。男性不妊患者の約4割に認められる。)を罹患しているケースですが、この場合は外科的な手術が必要となり、適切な処置を受けることによって改善されることが多いとされています。

精管欠損や精巣炎などの場合も同様ですが、泌尿器の専門機関へ紹介をしてもらうなどして、手術などによって造精機能の回復を図る、あるいは精子(細胞)の獲得を目指すようにしてください。また、原因がクラインフェルター症候群やY染色体欠失など遺伝子(染色体)によるものであった場合には、精子の獲得自体が極めて困難となりますので、こちらも専門機関を受診するようにしてください。

 

︎まずはライフスタイルの見直しを

まず、精子データの改善に取り組むためのステップ①は『生活習慣の改善』です。

もし、ご夫婦、あるいはどちらかにでも喫煙の習慣がある場合には、このコラムを読んだ夜に人生最後の一服をして、タバコとは永遠の別れを告げてください。

喫煙は、生殖細胞に直接的に悪影響を与えることが知られており、女性では卵子の質を著しく悪化させることが知られています。また男性では、精子の運動性を顕著に低下させるほか、染色体に異常をきたした精子を顕著に増加させます。つまり、生殖医療にとって喫煙は‟悪”以外のなにものでもありませんので、本当に子どもが欲しいと願うならばこの瞬間にやめてください。

そして、飲酒の習慣がある場合も同様です。過度なアルコール摂取は、造精機能に悪影響を及ぼすことが知られており、正常な精子を造るのが妨げられてしまいます。また、インポテンツ(ED)の原因にもなりますので、必ず適量に抑えるようにしてください。

 

加えて、最近特に注意したいのがAGA治療や、育毛剤・増毛剤の使用です。

近年、「頭がちょっと寂しくなってきたなぁ‥‥」という方に、専門的な治療を行うクリニックが増えてきましたが、薄毛、抜け毛対策として使われる一部の薬剤には、男性ホルモンを抑制する効果があり、精子を著しく減少させる副作用があることが知られています。

そのため、普段からAGA治療のためにお薬を使っているという方では、精子の数が減少しているという所見が頻繁に見られます。妊娠を目指す場合には、外見よりも精子を優先してください。

 

︎精子は毎日作られる!溜めすぎず出荷すること

次に、精子データ改善のためのステップ②は、精子を溜めすぎないことです。

よくある例として、「妻がこの日に採卵だって言うんで、丸一カ月我慢して溜めてきました!」という旦那さんがいらっしゃいます。

信じられないかもしれませんが、我々にとっては実に‟あるある”な事例です。

確かに、禁欲期間が長ければ精液量や精子濃度(精子の数)は増える傾向にありますが、精子の運動率に関しては反対に著しく低下します。また、DNAフラグメントと言って、簡単に説明すると、染色体に損傷を受けた精子が顕著に増加することが知られています。要するに、長期間に渡って禁欲し溜め過ぎると、精子の質という部分が明瞭に低下するわけです。

精巣は、言わば『工場』です。精子という商品は毎日作られるので、出荷していかないとどんどん在庫が溜まっていき、古くなり、ホコリを被った状態になってしまいます。

短いスパンで、商品を作っては出荷し、作っては出荷し‥‥というサイクルを繰り返すことで、新しく質の高い商品を作ることが出来るわけです。

一番の理想は、普段から2~3日おきに出荷し続けるサイクルを作ることですが、仕事などで忙しいという方もいるかと思いますので、出来る限りの努力を心がけてください。

 

温度管理に注意!

最後に、精子データ改善のためのステップ③は、『温め過ぎ・冷やし過ぎに注意する』ことです。

精子という細胞、あるいは精子を造る精巣は、熱の変化にとても弱いという性質を持っています。温め過ぎると精子は死んでしまい動かなくなってしまいます。反対に、冷やし過ぎても運動性は極度に低下してしまいます。

そのため、陰嚢が暑いときにはだらんと垂れ下がり、寒いときに縮み上がるのは、造精機能を損なわないために、反射的に温度の調節をしているためであると考えられています。

風呂(水風呂)やサウナの長時間の利用を避ける。フィットタイプからゆるいタイプの下着に変える。膝の上でノートパソコンを使わない。長時間の座位を避けるなど、温め過ぎない、あるいは冷やし過ぎない方法を考えて工夫していくことも、精子データの改善につながります。

 

今回は、精子データの改善に焦点を当ててお話ししてきましたが、ステップ①~③に取り組んだからと言って確実に精子データが改善するというわけではもちろんありません。

初めの注意書きにもあるように、いわゆる‟厳しい所見”の病態が認められている場合には、この程度のことでは改善はほぼ不可能です。

もしも、精子検査のデータがあまり良くない結果であったとしても、悲観することなく、正しい知識を身に付けるとともに、通院先の医師らと協力をしながら治療を進めていくことが重要です。

川口 優太郎先生

川口 優太郎先生

埼玉医科大学を卒業後、総合病院勤務を経た後に、国際基督教大学(ICU)大学院博士前期課程へと進学。アーツ・サイエンス研究科にて生命科学を専攻。大学院修了後は、加藤レディスクリニック(新宿区)に勤務。同クリニックの系列病院となった中国上海永遠幸婦科医院生殖医学センターへ出向し、病院の立ち上げに携わるとともに、現地スタッフの育成・指導や培養室の運営などを行う。その後、2018年に東京都渋谷区に新規開院となった桜十字渋谷バースクリニックに培養室の立ち上げスタッフとして赴任。培養室主任を務め、指導要領の作製や培養室の運営管理とともに、生殖医療関連のセミナーにて講演を行うなど、精力的に活動。2020年に、総合的な妊活サポート行うリプロダクティブサポートファーム東京を設立し、代表に就任。

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