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まさに奇跡のメカニズム! 妊娠に至るまでの9つのステップ | Marbera
Marbera運営事務局
2023/02/15
あらためて妊娠について考える
そもそも妊娠とは、どのような現象を言うのでしょう?
広辞苑で調べてみたところ「女性が体内に受精卵または発育した胎児を身ごもっている状態。正常の妊娠維持期間、すなわち受精から分娩までの期間は、最終月経から数えて約280日。懐妊、懐胎」とありました。
言葉で端的に説明すれば、まさにそのとおりです。
しかし、その仕組みはとっても複雑です。
妊娠の9つのステップ
妊娠に必要なステップは9つあります。
このどれかひとつでも上手くいかないと、妊娠という現象は起きません。
- 1.膣内に射精する
- 2.精子が子宮内に入る
- 3.精子が子宮内から卵管に進む
- 4.卵子が育つ
- 5.排卵する
- 6.排卵された卵子を卵管采が取り込む
- 7.卵管膨大部で受精する
- 8.受精卵が成長しながら子宮内まで移動する
- 9.着床
この全てがクリアされないと妊娠には至らないのです。
まさに奇跡です。
1.膣内に射精する
射精とは、男性が性的刺激を受けた際に陰茎が勃起し、精巣で作られた精子が精管を通り尿道から放出される状態をいいます。
とても簡単なことのように思えますが、実は男性も女性に負けないほどデリケート。
何気ない女性の言葉で傷つき、射精できないこともあります。
2.精子が子宮内に入る
射精ができれば、精子は子宮内に入る……そう考えますよね。
しかし膣内環境によって、精子は子宮内に進入できないことがあります
まずは子宮頸管粘液が十分に分泌されているかどうかがポイントです。
子宮頸管粘液は一般におりものと呼ばれていて、月経周期の時期によってPH(水素イオン濃度指数)が変化します。
膣から子宮内はひとつに繋がっています。
通常、膣内は体内に細菌等の異物が侵入するのを防ぐため、酸性の状態にあります。
そのPHは4~5と言われています。
ところが排卵間近になると、膣内はPH7よりちょっと高めの弱アルカリ性になります。
膣内を精液と同じ弱アルカリ性にして、精子が生存しやすく、子宮内に侵入しやすい環境に整えているのです。
排卵の4~5日前から水っぽい粘調度の高いおりもの(頸管粘液)が分泌されます。
このおりものが精子を吸い込むように包み、子宮内に送り込みます。
排卵期の子宮は卵管の方に向かうような動きをし、膣内に射精された精子を、子宮内から卵管に向けて泳ぎやすいようにサポートしているのです。
排卵期の頸管粘液の分泌が不十分であったり、抗精子抗体を持っている方は、精子が子宮内に進入できない場合があります。
この場合は、子宮内に直接精子を送り込む治療や人工授精でないと、受精のチャンスを得ることができません。
3.精子が子宮内から卵管に進む
精子が卵管まで進むためには、どれくらいの距離を進んでいくのでしょう?
子宮頸管は約3cm、子宮内から卵管口までが約7cm、卵管の入り口から受精の場と言われる卵管采まで約7~12cmです。
個人差はありますが、約20cmの距離を、精子は泳ぎ切らないと卵子には出会えません。
では、精子の大きさはどれくらいなのでしょう?
精子の全長は約60μmです……イメージできますか?
1μmは0.001mmです。
頭髪の直径が約60μmといわれていますので、当然肉眼では見えません。
この精子が、約20cmの泳ぎの旅に出ていくのです。
1回の射精で放出される精子は、個人差があるものの約1億個と言われています。
そのうち子宮頸管に進めるのが約100億個、さらに卵管膨大部まで侵入できるのは約300個です。
20cmの距離を一心不乱に昇りつめ、出会えるかどうかわからない卵子に向かって戦う姿を想像してみてください。
それだけの力が精子には必要になってきます。
4.卵子が育つ
卵子は、卵巣内で発育します。
排卵までの大きさに成長するために、約6か月前から準備をはじめます。
そもそも、卵子は原始卵胞という状態で、卵巣内で眠っています。
既に生まれる前、お母さんのお腹の中にいる時に作られているのです。
その卵子の元の数は、減ることがあっても増えることはありません。
ちなみに、生まれたときから持っている卵子の元の数は個人差が大きく、たくさん持って生まれてくる方もいれば、少ない方もいます。
不妊治療に入る前に、この数の指標となる抗ミュラー管ホルモン(通称AMH)を検査することで、自分の体内にどれくらいの卵子の元が残っているのか確認できます。
5.排卵する
一生涯の間に排卵する卵子の数は、約520個と言われています。
そして毎月1個排卵するのに、実は数個から数10個の卵子の元がエントリーし、その1個以外は残念ながら吸収されてしまいます。
この排卵に重要な役割を果たしているのが、脳から分泌されるホルモンです。
卵胞を育てるためのFSH(卵胞刺激ホルモン)と、主席卵胞という女王様の様な卵胞が約20mmくらいまで育つと、排卵する卵子を成熟させるためにLH(黄体形成ホルモン)が分泌され、排卵へと導きます。
排卵は、卵巣内で大きく成長した1個の卵胞が破裂して、卵子が飛び出すことを言います。
毎月毎月、卵巣内で小さな破裂が起きますので、時には少量の出血を伴うこともあります。
6.排卵された卵子を卵管采が取り込む
卵管采は卵管の先端にあり、イソギンチャクのような形をしています。
卵巣を手のひらで覆い込む様子をイメージしていただくとわかり易いかもしれません。
この卵管采が上手く機能していないと、排卵した卵子が卵管内に取り込まれません。
これを、ピックアップ障害と呼びます。
残念ながら現代の医学では、ピックアップ障害を確認する簡単な検査はありません。
例えば子宮卵管造影検査で、卵管采に水腫が出来ているとか、卵管が腹腔に癒着しているなどの結果が出れば、予測できるかもしれません。
いずれにしても、排卵した卵子を卵管采が取り込むことができれば、精子と出会うチャンスを得ることができます。
7.卵管膨大部で受精する
受精とは、精子という1個の細胞と卵子という1個の細胞が合一することです。
その1個のために、精子も卵子も凄まじい争奪戦を繰りひろげます。
精子は1億という仲間を蹴落としながら子宮のさらに奥まで進み、約300個の仲間と排卵してくる卵子を待っています。
一方、アイドルのセンター争奪戦のようにして打ち勝った、たった1個の卵子が排卵によって卵管膨大部に取り込まれます。
ここで待ちぶせしていた精子が、卵子を目指し突き進みます。
そしてたどり着いた精子は、頭部から酵素を発し、卵子の中に侵入します。精子の侵入を受けた卵子は、他の精子が侵入しないよう、卵子の表面を変化させます。
精子の先端から十分な酵素が出なかったり、卵子の周囲を覆っている透明帯が固すぎたりすると、精子は卵子の中に進入できません。
これを受精障害と言います。
この場合は、体外受精、顕微授精の技術を用いて受精させます。
8.受精卵が成長しながら子宮内まで移動する
精子と卵子の出会いから約12~24時間後に核の融合が起こります。
この状態を受精したと判断します。
その後は細胞分裂を繰り返し、2日目には2~4細胞、3日目には6~8細胞、4日目には桑実胚、5~6日目には胚盤胞へと、どんどん細胞分裂を繰り返しながら卵管から子宮腔内に移動します。
9.着床する
胚盤胞は、内細胞塊、栄養膜、胞胚腔からできています。
内細胞塊は、赤ちゃんになる部分と言われています。
そして、胚盤胞まで発育した受精卵が、外を覆っている透明帯から孵化し、子宮内膜へと接着することを着床といいます。
この着床について、最近の研究では、子宮内膜もまた元気のある受精卵を選び、子宮内へと導いているような動きをすることが分かってきています。
種の保存のために生命力の強い精子と卵子が融合し、さらに元気な受精卵だけが選ばれて子宮腔内に着床できるのかもしれません。
まとめ
以上が、妊娠のしくみです。
どの工程も省略することができないし、どの工程も正常に機能しないと妊娠という奇跡は起きないのです。
Marbera運営事務局