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LGBTが子供を持つために。日本での不妊治療の現状は? | Marbera

Marbera運営事務局

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2021/12/01

LGBTの日本での現状

最近ではよく知られるようになったLGBTというのは、セクシャルマイノリティの総称です。レズビアン・ゲイ・バイセクシュアル・トランスジェンダーそれぞれの頭文字をとったもので、最近では自分のセクシャリティを限定しない人を含めてLGBTQと表されることも増えました。

日本でもダイバーシティが進み、多様性を認めようという動きのなかで同性婚の合法化などの必要性が問われています。

2021年11月現在では、まだ日本では同性婚は法的には認められていません。しかしセクシャルマイノリティであることを公言する人や、LGBTカップルで事実婚をしていることを公言する人が増えています。また、自治体によってはパートナーシップ制度を設け、LGBTカップルに婚姻に相当する証明書を発行したりという動きも広がりつつあります。

こうして一般的な婚姻関係にあるカップルと同じように家族として人生をともにしている人の中には、当然子供を持ちたいと思う人がいます。けれども、たとえばレズビアンやゲイのような同性カップルでは自分たちだけで妊娠、出産にいたるということはできません。LGBTカップルが子供を産むための方法や、日本での不妊治療の現状をお伝えします。

LGBTカップルが子供を持つためには

すでにご説明したとおり、LGBTというのはセクシャルマイノリティの総称であるため、子供を持つための方法もいくつかあります。異なるケースにあわせてご説明します。

自分たちだけで妊娠が可能なケース

トランスジェンダーカップルで、かつ同性愛者だった場合や、トランスジェンダー同士のカップルだった場合は自分たちだけで妊娠が可能なケースがあります。たとえばトランスジェンダーカップルで同性愛者だった場合には、性適合手術を受ける前であれば生物学的には男性と女性の組み合わせということもありえます。同様に、トランスジェンダー同士のカップルというのも、性適合手術を受ける前であれば生物学的には男性と女性の組み合わせになるため、妊娠が可能です。

これらのケースの場合、自分の性自認とは異なる性を名乗ることになりますが、法的に婚姻関係を結ぶことも可能で、不妊治療を受けることも難しくありません。

第三者から精子の提供を受ける

一般的な同性カップルの場合は、自分たちだけで妊娠することはできません。そのため、第三者から精子や卵子の提供を受け、体外受精をする必要があります。女性同士のカップルの場合は第三者から精子提供を受けて妊娠、出産に至るというケースが多いようです。

出自を知る権利の問題

第三者からの精子提供では出自を知る権利という課題が残ります。特にLGBTカップルの場合、第三者からの精子提供を受けた可能性が高いことは子供自身も自然と知ることになるでしょう。

LGBTカップルに限らず、第三者からの精子提供を受けて産まれた子供は、後に自分は誰の遺伝子を受け継いでいるのかという疑問を抱いたり、遺伝性疾患について不安を抱いたりという可能性があります。実際自分が誰なのかがわからず、アイデンティティの喪失状態にある人は少なくないようです。

その上で、第三者からの精子提供を認めている国では、個人を特定できない範囲内での提供者情報の開示や、個人を特定できる状態での提供者情報の開示を法的に認めている国も多く、日本でも議論が進められています。しかし現状日本では提供者情報の開示はなされておらず、子供の立場を考えると第三者からの精子提供が安易に推し進められない状況です。

第三者から卵子の提供を受け、代理母での出産

男性同士の同性カップルの場合は、卵子提供を受けた上でさらに代理母での出産が必要になります。現在の日本では代理母出産自体が認められていないため、LGBTカップルの中でも子供を持つハードルが比較的高くなってしまいます。

ステップファミリー

自分たちで妊娠、出産という過程を経なくとも、養子縁組という形で子供を持つ夫婦はたくさんいます。特別養子縁組のように実親として育てている人もいますが、現在の日本では婚姻関係を結んでいない限り特別養子縁組制度の対象になりません。そのため、日本でステップファミリーとして子供を育てているLGBTの場合、どちらかがシングルとして育てていた実子を一緒に育てるというケースが多いようです。

ちなみに同性婚を合法としているほとんどの国では、同性カップルにも特別養子縁組制度の権利が認められています。

LGBTカップルの不妊治療の現状

前提として、日本では代理母出産が認められていないため、ここでお伝えするLGBTカップルの妊娠というのは精子提供を受けての妊娠の話になります。また、性適合手術を受けていなければ、性自認が男性であり生物学的には女性である「トランスジェンダー男性」でも妊娠、出産は可能です。しかし、性自認が男性である人が妊娠を望むケースは少ないため、ここでいう妊娠は主に女性同士の同性カップルと仮定します。

女性同士の同性カップルが第三者の精子提供を受けて妊娠するためには、シリンジ法を試すか不妊治療を受けるかという選択肢があります。シリンジ法というのは男性がマスターベーションによって出した精子を、シリンジという注射器のような器具を使って女性の膣内に挿入し、自然妊娠を望む方法です。シリンジ法のためのシリンジ自体は市販でもキットが売っているため、必ずしも不妊治療を受けなければならないというわけではありません。ただし、採取した直後の精子を注入する必要があるため、都度その機会を作ることは難しく、LGBTカップルが妊娠するための方法としてはあまり一般的ではありません。

LGBTカップルが妊娠するための不妊治療

女性同士の同性カップルが妊娠するためには、人工授精か体外受精いずれかの不妊治療を受けることになります。人工授精というのは男性から採精した精子を洗浄濃縮し、最も妊娠しやすいタイミングで子宮内に注入します。一方体外受精というのは女性の卵巣から卵子を一度取り出し、採精した精子と受精させてから子宮内に移植します。いずれの場合も凍結精子を使用することも可能なので、必ずしもその都度男性が協力しなければならないというわけではありません。

人工授精のほうが自然妊娠に近い方法で費用も安いことが多いですが、妊娠の確率は体外受精のほうが高くなります。

日本では原則LGBTカップルの不妊治療は認められていない

現在、日本では原則としてLGBTカップルの不妊治療は認められていません。まず、日本では不妊治療自体が日本生殖医学会の会告により「体外受精胚移植法を受けるカップルは法的婚姻関係があること、事実婚カップルの場合には事実婚カップルに由来する生殖細胞を用いる治療に限定して治療を容認すること」と規定されています。そのため、パートナーシップ制度を認めていない自治体では、不妊治療を受けること自体が難しくなります。

さらに、日本産科婦人科学会のガイドラインでは精子提供を受けての不妊治療を婚姻関係がある夫婦に限定しています。そのため、残念ながら現在ではLGBTカップルが日本で不妊治療を受けるのはとても難しいというのが実情です。

国内でLGBTカップルが不妊治療を受けたケースもある

原則としてLGBTカップルへの不妊治療は日本では認められていませんが、2019年に岡山大学が実施した調査では、匿名回答した492施設のうち4施設がLGBTカップルへの不妊治療を実施したと回答しています。しかし、これによって実際に子供が産まれたかどうかは不明です。

多様化とともにLGBTの権利拡大も期待される

そもそも婚姻関係の合法化がされていない日本では、LGBTカップルに対する法整備には課題がたくさん残っています。しかし、生活の多様化が急速に進むようになったりLGBTであることを公言する人が増えたりという背景を受け、パートナーシップ制度のようにLGBTの権利拡大も急速に進んでいます。

LGBT当事者たちは、性自認や性的対象者が今まで想定されてきた異性間恋愛と異なるというだけで、その他になんら違いはありません。大切なパートナーと家族として暮らし、子供を育てていきたいと考える人もたくさんいます。

今後LGBTの権利拡大が検討される中で、特別養子縁組制度や不妊治療に関しても検討が進んでいくことが期待されています。

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