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卵子の在庫数(卵巣予備能)を知ってライフプランニングを!AMH検査 | Marbera
川口 優太郎先生
2019/06/06
前回、日本の現代社会の情勢においては、女性が自身のキャリアとライフイベントとの両立を図るためには、仕事、結婚、妊娠、出産といった「ライフプランニング」を行うことがとても重要であること。
そして、ベストなタイミングを見極めるための判断材料として、自身の年齢と、卵巣内に残っている卵子の数を計算することが有効であるとお伝えしました。
少し復習になりますが、女性の卵巣内には、出生時には約200万個の卵子の元が備わっています。
その卵子の元が、
月経がはじまる思春期ごろまでに徐々に淘汰されていき、約30~40万個にまで減少します。
そして、月経がはじまってからは、
ひと月に約1000~2000個の卵子が減っていくと考えられており、
20歳で約15万個程度、
30代の半ばを過ぎる頃には約5~8万個程度、
40代では数千個にまで減少し、
限りなく0に近づいた状態になると閉経します。
しかしながら、これはあくまでも一般的に示されている平均的なデータであり、
実はどんなに年齢が若くても卵巣機能が不良で、
卵子の数が少ないという方がいらっしゃいます。
また反対に、高齢の方でも卵子の数は比較的多いという方もいらっしゃいます。
これには、年齢とともに卵巣が受けたダメージの蓄積という考え方や、遺伝的な要因、過去の疾患などさまざまな理由が推測されていますが、要は、必ずしも本人の年齢と卵巣内の卵子の残りの数が比例関係では無いということです。
そこで近年、卵巣内の卵子の数(卵巣予備能)を知るためのある検査が導入されています。
それが『AMH検査』と呼ばれる検査です。
AMH(Anti-Mullerian Hormone)とは
AMH(Anti-Mullerian Hormone)とは抗ミュラー管ホルモンの略称で、発育過程にある卵胞から分泌されるホルモンの一つです。
卵胞は、原始卵胞→発育卵胞→前胞状卵胞→胞状卵胞→成熟卵胞という順に成熟していき、1つの卵胞の中に1つの成熟した卵子が育ちます。
この一番最初の段階である、原始卵胞が成熟を促された時にAMHが分泌されるため、このAMHの値は、卵子の元である原始卵細胞の数と比例すると考えられています。
つまり、AMHを測ることによって卵巣内にどれぐらい卵の数が残っているかを調べることができるのです。
また、AMH検査が優れている点は、LH(黄体形成ホルモン)やFSH(卵胞刺激ホルモン)などのホルモン検査と比較し、生理周期による変動が極端に少ないということです。
そのため、検査を行う時期にほとんど制約が無いことから、いつでも簡易に検査をすることができるだけでなく、その検査値についても評価の正確性が高いと言われています。
基本的には、すでにお伝えしている通り、
年齢によってAMHの値は徐々に低値を示すようになりますが、必ずしも年齢に比例するものではありません。
年齢にもよりますが、AMHの値が実年齢の平均値よりも高ければ、それだけ妊娠を考えるための猶予があるというわけです。
アメリカやオーストラリアなどの諸外国では、
若い女性たちがAMH検査を受け、将来的なライフプランニングを行うための一つのアイデアとするキャンペーンは、国をあげて活発に行われており、「AMHの値で保険の値段が上下する」といった面白い取り組みを導入しようとしている企業もあるそうです。
しかしながら、AMHの値が示しているものは、あくまでも卵巣予備能の推測値であり、
確実にその数が残っているというわけではありません。
また、AMHの値でわかるのは卵子の“数”であり、卵子の“質”ではありません。
卵子の“質”については、やはり実際の年齢と同様となります。
妊娠することができるかどうかは、卵子の“質”の方がより大きなウエイトを占めているため、もしAMHの値が高く卵巣予備能がある高いという結果が得られたとしても、年齢が40代をとうに過ぎていたら卵子の“質”は著しく低下している可能性が高く、妊娠率はやはり実年齢の平均的な妊娠率と相当となります。
不妊治療を受ける人が年々増えていく一方で、
女性は「卵子の数が減り続ける」ということを知らないという方がまだまだ多いのが実状です。
正しい知識をしっかりと身に付けて行動に移していくといったスマートな生き方が、現代社会の女性の新しい形になっていくことが望まれます。
川口 優太郎先生
埼玉医科大学を卒業後、総合病院勤務を経た後に、国際基督教大学(ICU)大学院博士前期課程へと進学。アーツ・サイエンス研究科にて生命科学を専攻。大学院修了後は、加藤レディスクリニック(新宿区)に勤務。同クリニックの系列病院となった中国上海永遠幸婦科医院生殖医学センターへ出向し、病院の立ち上げに携わるとともに、現地スタッフの育成・指導や培養室の運営などを行う。その後、2018年に東京都渋谷区に新規開院となった桜十字渋谷バースクリニックに培養室の立ち上げスタッフとして赴任。培養室主任を務め、指導要領の作製や培養室の運営管理とともに、生殖医療関連のセミナーにて講演を行うなど、精力的に活動。2020年に、総合的な妊活サポート行うリプロダクティブサポートファーム東京を設立し、代表に就任。