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胚培養士も伝えたい!食生活を見直して妊娠しやすい身体づくりを

川口 優太郎先生

培養士も伝えたい!食生活を見直して妊娠しやすい身体づくりを!

前回は、食生活や睡眠、タバコ、飲酒といった生活習慣が妊娠に対して大きな影響を与えるということをお伝えしました。

特にタバコや飲酒は、俗に言われるように妊娠に関しては「百害あって一利無し」ですので、タバコやお酒好きだという方は、赤ちゃんを望んでいるならばグッとこらえて、我慢していただけたらと思います。

食生活や睡眠についても、やはり気を付けていないと妊娠に悪影響を及ぼしてしまいます。

しかしながら、これらについては、反対にしっかりと正しく改善していくことで、むしろ妊娠率を向上させることが可能となります。

今回は、食生活の改善という部分に焦点を当てて、最新の論文を紹介しながらお話しをしていきたいと思います。

妊娠率アップの食材

昨年の2018年に、米国学術誌The Journal of Clinical Endocrinology and Metabolismに発表された最新の論文において、妊娠率をアップさせるかもしれない興味深いある食材についての研究が掲載されています。 

米国・ハーバード大学公衆衛生大学院のAudrey J Gaskins博士らの研究チームは、2005~2009年にアメリカ国内で保健福祉省の協力の下実施された大規模調査である【不妊と環境に関する長期的調査】に参加し、その際の調査結果から、妊活中だったカップル計501組の食生活に注目しました。

この研究では、カップルの生活習慣を1年間にわたって細かく追跡調査し、食生活とセックスの回数について記録と検討を行いました。

するとその結果、女性の排卵周期(約一ヶ月の間)ごとで‷魚介類‴を8回以上摂取していたカップルは、0~1回しか摂取しなかったカップルよりも1年以内の妊娠率が有意に高かったと報告しています。

また、魚介類を週に2回以上食べたカップルのおよそ92%が1年以内に妊娠し、さらに、魚介類の摂取量が最多だったグループが1年以内での妊娠率が最も高かったとしています。

明確な証拠はまだ明らかとなってはいませんが、研究チームのリーダーであるGaskins博士は、魚介類に多く含まれるオメガ-3-脂肪酸が、妊娠率の向上につながったのではないかと推測しています。

そもそも脂肪酸には、牛肉・乳製品・卵黄に多く含まれる飽和脂肪酸と、魚・ナッツ類・大豆に多く含まれる不飽和脂肪酸があります。この不飽和脂肪酸の中でも、体内で作ることができず、食事などで摂取する必要がある必須脂肪酸がオメガ-3-脂肪酸です。

生殖機能をアップさせるオメガ-3-脂肪酸!

オメガ-3-脂肪酸は、狭心症、心筋梗塞などの冠動脈疾患や心臓病といった疾病や、脳梗塞などの脳疾患のリスクを低下させることが知られており、特に高齢の方では、積極的に魚介類を摂取している方ほど健康指数が高く、将来的に生活習慣病などに罹患する可能性が低くなると言われています。

さらには、先行研究よりヒト以外の多くの動物種において、雌雄ともにオメガ-3-脂肪酸が生殖機能を向上させるということが示されています。
 

また、Gaskins博士は、排卵周期ごとに魚介類を食べる回数が多いカップルほど一緒に食事を摂る回数が多く、セックスの回数も多かったと指摘しています。

カップルで同時にオメガ-3-脂肪酸を摂取できたことで、食生活が改善されて健康指数が上がり妊娠率が高まったのではないかと考察しています。

オメガ-3-脂肪酸については、最近、健康に良い食品として「血液がサラサラになる」、「頭が良くなる」などとテレビで取り上げられる機会も増えてきたので、知っているという方もいらっしゃるかもしれません。

オメガ-3-脂肪酸を豊富に含む食材は

特に『亜麻仁(アマニ)油』や『えごま油』は、オメガ-3-脂肪酸を豊富に含む食材として注目を浴びており、効率的に摂取する方法としてこれらを使った料理などが紹介されています。

しかしながら、使い方を誤ると人体に大変な悪影響を及ぼすため、注意して使っていただきたい食品でもあります。

というのも、オメガ-3-脂肪酸は熱に非常に弱いという性質を持っており、70℃を超えた状態で長時間加熱し続けると過酸化脂質という有害物質に変化しはじめます(※発がん性物質を活性化させると指摘されている)。

インターネットで料理を紹介するようなページを見ていると、えごま油を使って炒め物をするような料理も紹介されており、本当にびっくりしてしまいますが、食生活の改善を図る場合は、正しい知識の下で、夫婦で取り組んでいくことが重要です。

 

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川口 優太郎先生

埼玉医科大学を卒業後、総合病院勤務を経た後に、国際基督教大学(ICU)大学院博士前期課程へと進学。アーツ・サイエンス研究科にて生命科学を専攻。大学院修了後は、加藤レディスクリニック(新宿区)に勤務。同クリニックの系列病院となった中国上海永遠幸婦科医院生殖医学センターへ出向し、病院の立ち上げに携わるとともに、現地スタッフの育成・指導や培養室の運営などを行う。その後、2018年に東京都渋谷区に新規開院となった桜十字渋谷バースクリニックに培養室の立ち上げスタッフとして赴任。培養室主任を務め、指導要領の作製や培養室の運営管理とともに、生殖医療関連のセミナーにて講演を行うなど、精力的に活動。2020年に、総合的な妊活サポート行うリプロダクティブサポートファーム東京を設立し、代表に就任。