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不妊治療助成金ってなに?対象者や申請方法、注意点など

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不妊治療助成金とは
不妊治療助成金と呼ばれているのは、国が実施している特定不妊治療費助成事業から支払われる、高度不妊治療に対する助成金のことです。
高度不妊治療というのは、一般的には顕微授精を含む体外受精のことを指しています。体外受精にかかる費用は医療機関によって異なりますが、50万円から100万円ほどかかります。1回の移植を受けるまでに50万円から100万円といえば、それだけでも少ない金額ではありません。そのうえ一度の移植で妊娠するとも限らず、数回繰り返すことになるとより高額な費用が必要になります。
たとえば2018年の日本産科婦人科学会の発表によると、胚移植当たりの生産率(出産率)は30歳で34%、35歳で30%、40歳で17%、45歳で2.8%となっています。しかし、これはあくまでも一度の移植あたりの割合でしかありません。
体外受精というのは移植の前に採卵を行い、体外に取り出した精子と卵子を受精させてから子宮内に移植することになります。しかし、採卵で必ず状態の良い卵子が取れるとは限らず、さらに移植できる状態まで受精、培養できるとも限りません。場合によっては卵巣刺激から採卵、培養の過程で50万円ほどかかるというケースもあり、それでも移植できるとは限らないということになります。
不妊治療助成金では、こうしてやむを得ず移植ができなかった採卵でも一部費用の助成が受けられます。
不妊治療助成金の対象者
不妊治療助成金の対象者は以下のすべての要件を満たす必要があります。
- 特定不妊治療以外の治療法では妊娠の見込みがない、あるいはその可能性が極めて少ないと医師が判断したケース
- 特定医療機関で特定不妊治療を受けている
- 「1回の治療」の開始日における妻の年齢が43歳未満であること
- 「1回の治療」の初日から申請日まで婚姻関係があること または 対象の都道府県の指定による条件で事実婚が証明できること
- 助成上限回数の上限を満たしていること
特定不妊治療費助成事業は、国の定めによって各都道府県が運営しています。そのため、各都道府県が指定している特定医療機関については、各都道府県ごとに調べる必要があります。また、基本的には1回の治療の開始から終了までの間、申請する都道府県の指定期間によって治療を受けていることが条件になります。
助成上限回数というのは、妻の年齢によって異なります。妻の年齢が40歳未満で通算1回目の助成を受けた夫婦では通算6回まで、妻の年齢が40歳以上43歳未満で通算1回目の助成を受けた夫婦の場合は通算3回までという決まりがあります。この助成回数の上限は、他の自治体での助成回数が含まれます。つまり、たとえば40歳未満で通算1回目の助成を受けた夫婦が、3回目の助成金を受け取った時点で引っ越しなどをして不妊治療を続ける場合、4回目からは新しい居住地で申請をすることになりますが、通算回数に関してはリセットされません。
また、この上限回数は「一子ごと」の回数となります。そのため、出産した場合と、妊娠12周以降に流産、死産に至った場合には通算回数をリセットすることができます。ただし、通算回数のリセットには申請が必要です。
助成上限額
助成上限額は、治療ステージによって異なります。治療ステージと上限額の詳細は以下を参照にしてください。
治療ステージA:新鮮胚移植を実施:30万円
治療ステージB:凍結胚移植を実施:30万円
治療ステージC:以前に凍結した胚を解凍して移植を実施:10万円
治療ステージD:体調不良などにより移植の目処が立たず治療終了:30万円
治療ステージE:受精できず:30万円
治療ステージF:採卵したが卵が得られない、または状態の良い卵が得られないため中止:10万円
そもそも卵胞が十分に発育しなかったり、排卵終了のため採卵自体が中止になってしまったり、採卵の準備まではしたものの体調不良などにより採卵が中止になってしまった場合には助成の対象にはなりません。
申請に必要な書類
申請に必要な書類は以下の通りです。
- 特定不妊治療自費助成申請書
- 特定不妊治療費助成事業受診等証明書
- 住民票の写し
- 戸籍全部事項証明
- 申請者及び配偶者それぞれの所得関係書類(住民税課税/非課税証明書または住民税額決定通知書)
- 治療の領収書
精巣内精子生検採取法を受けた場合、さらに以下の書類が必要です。
- 精巣内精子生検採取法等受診等証明書
- 上記に関わる領収書
都道府県によっては、年度内で2回目以降の申請に関しては必要書類の一部が省略できる場合もあるので確認してください。
不妊治療助成金の注意点
不妊治療助成金についての詳細を説明しましたが、ここからは実際に申請する際の注意点についてお伝えします。
申請書類や申請期日、申請方法は都道府県ごとに異なる
すでにご説明した通り、特定不妊治療費助成事業自体は国によって定められた事業ですが、その運営は各都道府県に任せられています。そのため、申請書類の様式を始め、申請期日や申請方法は都道府県によって異なります。
たとえば東京都では申請期日は基本的にはその年度内です(一部、1月~3月に終了した治療に関しては申請期日が異なります)。つまり、8月に終了した治療に関しては、翌年の3月末日が申請期日です。しかし、神奈川県の場合には申請期限は治療終了日から60日以内という定めがあります。
また、東京都では郵送による申請ですが、神奈川県では原則申請窓口に申請書類を提出する必要があります。ただし、2021年6月現在では新型コロナウイルス感染対策として特別に郵送の申請を受け付けている場合もあり、希望する人はまず申請窓口に問い合わせをすることになっています。
令和3年1月1日以降に終了した治療に関してはそれ以前の内容と変更がある
令和3年1月1日以降に終了した治療を対象に、不妊治療の助成の条件や金額が拡充されました。助成金額の上限が変更になった点においては、すでに年度も変わっているので「知らなくて損をする」ということはありません。
しかし、所得制限と助成回数の上限の変更においては、再度確認しておきましょう。というのは、これまで助成条件には所得制限がありました。また、助成回数の上限もこれまでは「一子ごと」ではなく治療の通算回数で定められていました。
そのため、これまで所得制限により対象外だと思っていた人や、すでに上限回数に達しているので対象外だと思っていた人でも助成の対象になることがあります。
計画的に申請をしたほうが費用金額が大きくなることがある
一子ごとに6回の助成上限という条件を超えずに出産に至るに越したことはないのですが、必ずしも理想どおりに治療が進むとは限りません。その際、計画的に申請をしたほうが費用の面では得をすることがあります。
たとえばすでに5回の申請を受けていて、あと一度しか申請できないという状況の場合、凍結した胚を解凍して移植し、それで妊娠できなかった場合には、そのまま申請すると6回目の申請はステージCに該当するため10万円の助成となります。しかし、継続して治療することを決めていて、次はまた採卵からスタートということになれば、場合によっては30万円の助成対象になる可能性があります。この場合、あえてステージCでは申請をせず、次の治療に上限回数をとっておくというのもひとつの選択肢です。
申請から結果の決定、支払いまでには時間がかかる
これは各都道府県によっても状況が異なりますが、申請から結果の決定、実際の支払いまでには一定の時間がかかるものと考えておきましょう。特に東京都のように申請者が多数の場合、さらには申請期限が年度末という場合には、申請期限間近になると申請件数が増えます。そのため、通常でも申請から決定までには約3ヶ月、申請期限間近の申請ではさらに時間がかかります。
別途各自治体の助成事業というのもある
これまでに説明したのは国による特定不妊治療費助成事業ですが、その他各市区町村ごとに特定の助成を行っていることがあります。
たとえばステージAの治療に対してさらに15万円といった助成金が出ることもあれば、不妊治療の費用を全額サポートしている地域もあります。都道府県ごとの助成事業以外に対象となる助成事業がないか、各市区町村に確認するのを忘れないようにしましょう。
不妊治療助成金を上手に活用して少しでも費用負担を軽減して
体外受精を検討していても、調べているうちにその高額な費用から自分には到底無理だと考えてしまう人もいるようです。また、治療の計画をたてる際にあらかじめ治療にかけられる予算を決め、「3回まではチャレンジしてみよう」と決める夫婦もいます。
このような助成金を活用すれば、一回あたりの自費がぐっと抑えられることも少なくありません。助成金というのは、自分で申請しなければ受けられるものではなく、知らないというだけで損をしてしまうのが現状です。
高度不妊治療の計画をたてるのであれば、助成金のこともしっかり調べてから決めることをおすすめします。

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