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困難な不妊治療の通院。仕事との両立のポイントは?

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女性の社会進出が進み、結婚をしているか否かに関わらず仕事をしている女性は以前に比べて増加しています。また、不妊治療やART(生殖補助医療技術)の研究自体が目覚ましく進歩していること、地域や行政のサポートが柔軟になってきていることから、働きながら不妊治療を受けている人というのも、実は今や珍しいことではありません。

実際、厚生労働省が発表している「平成29年度 不妊治療仕事の両立に係る諸問題についての総合的調査研究事業」の調査では、不妊治療をしたことがある労働者の中で、不妊治療仕事を両立ている人の割合は、53.2%にものぼることがわかっています。

しかしもう一方で、不妊治療のための通院が仕事との両立を困難にしているという現実もあります。もちろんすべての人が通院の困難さを理由としているわけではないものの、不妊治療のために仕事を辞めた、仕事のために治療をやめた、あるいは治療のために仕事の内容を変えたという人の合計は3割以上になるということもわかっています。

この記事では、不妊治療のための通院の実情と、仕事との両立のためのポイントをお伝えします。これから不妊治療を始める人や、不妊治療中で仕事との両立に悩んでいる人はぜひ参考にしてください。

不妊治療における通院頻度の目安

不妊治療の通院頻度は、男性と女性で大きく異なります。不妊の原因自体は男女両方に原因がある場合を含めると、不妊治療中の人の約半数のケースで男性にも原因があると考えられています。しかし、やはり出産まで赤ちゃんを育てていくのは母体であり、着床や妊娠が母体でのみ成立するため、不妊治療の通院は女性の月経周期に合わせて行うことになり、それに合わせた通院が必要になります。

不妊治療には大きくわけてタイミング法、人工授精、体外受精の3つのステップがあり、それぞれの治療法によっても通院頻度が違います。ここでは、男女ともにそれぞれの治療法においての通院頻度の目安をお伝えします。

タイミング法の通院回数目安

タイミング法の場合、男性の通院は必要ありません。女性の場合は、卵胞の発育具合を見て妊娠しやすい日に性交渉のタイミングを取れるよう指導してもらうのがタイミング法です。そのため、月経や排卵が安定している人であれば、一度の通院で済むことがあります。

卵胞の発育具合を何度か見ながら調整したり、排卵誘発剤で排卵を促す必要があったりする場合でも3回程度の通院で済むのが一般的です。

人工授精の通院回数目安

人工授精は卵胞の発育具合を確認しつつ、排卵の時期に合わせて管を通して精子を子宮に送り込みます。基本的には男性が人工授精当日に採精といって精子を容器に出すのですが、これは病院で行う人と、自宅で行ったものを持ち込む人がいるので必ずしも通院が必要なわけではありません。また、精子所見が良い人であれば、事前に採精して凍結したものを使用することも可能です。

女性の場合には、卵胞の発育具合を確認するための通院と人工授精当日の通院が必要になり、最低では2回の通院ということになります。タイミング法同様に、卵胞の発育具合を度々確認することになったり、排卵誘発剤で排卵を促す必要があったりする場合には1~2回、通院回数が増すことになります。

体外受精の通院回数

体外受精というのは、精子も卵子も一度体外に取り出し、受精卵へと培養してから体内に戻します。体外受精には薬を極力使用せずに自然に近い状態で卵胞を育てていく方法や、卵巣を刺激して効率的に一度で複数の卵胞を育てていく方法があります。それぞれの方法によって通院回数や費用に大きな違いが出るのが特徴です。

卵巣刺激を行わない場合では採卵までに人工授精と同様の卵胞観察を行います。卵巣刺激を行う場合には卵胞の発育具合を見ながら薬の量を調整することになり、採卵の周期にはだいたい3~5回の通院が必要です。高刺激で進めていく場合には、もっと通院回数が増えることも考えられます。

そして実際に培養した受精卵を移植する移植周期にも、だいたい3~5回の通院が必要になります。

不妊治療と仕事を両立するポイント

不妊治療に集中するために、一度仕事を辞めるという決断をする人は少なくありません。しかし、2021年8月現在では不妊治療は保険適用外の治療でもあり、体外受精ともなると一度の採卵と移植までの費用が100万円以上にのぼるケースもあり、費用面での問題もありできれば仕事は続けていきたいと考えている人も多いです。

もちろん自分が納得して仕事を辞めるのであれば良いのですが、共働きでないと治療費の捻出が難しいという人も多いでしょう。また、子供を育てていく上で共働きでの育児を計画しているのであれば、治療のために仕事を辞めてしまうのは慎重な検討が必要です。妊娠中や出産直後では求職活動はより困難になり、都心部では働いていないと出産後に保育園に通うことが難しいケースが多く、保育園が決まっていないと仕事が決まらないという悪循環に陥ってしまう可能性があるからです。

不妊治療はしたいけれど仕事と両立していきたいと考える人のために、治療と仕事を両立するためのポイントをいくつかあげてみます。

会社の制度の利用や上司への相談

最近では、不妊治療に関する福利厚生を用意している会社が増えています。不妊治療に使うための休暇があったり、費用サポートだったりと内容はそれぞれですが、まずはこのような制度がないか確認してみましょう。

もちろん不妊治療というのはプラベートな内容なので、会社に制度があっても治療中であることを会社に伝えることを躊躇する人もいるでしょう。もちろん自分にとって伝えるほうが負担になるのであれば、会社には伝えないという選択肢もあります。けれども伝えること自体に大きな抵抗がなければ、福利厚生が整っていなくても上司や仕事で関わる人に伝えることで個人的な配慮が得られたり、両立のためのアドバイスをもらえることもあります。

不妊治療連絡カードを活用する

厚生労働省の公式サイトでは、不妊治療を受けながら働ける社会を作るためのガイドブックなどが公表されています。そこでダウンロードできる資料のひとつに、不妊治療連絡カードというものがあります。これは、不妊治療を受けている医療機関で書いてもらうもので、下記のような内容が記載されています。

・不妊治療の実施時期

・特に配慮が必要な事項

会社によっては個人として伝えるよりも、医師からの正式な書面で提出したほうが配慮が得られやすいということもあるため、必要に応じて活用してください。

必要な配慮については明確に伝える

いずれの場合も重要なのは、必要な配慮について明確に伝えることです。すでにお伝えしているように、不妊治療での通院回数や治療法は人によって大きく異なります。最近では不妊治療に関する認知も広がってきていますが、それでも治療経験者とそれ以外の人の間には認識している内容に大きく差があるということを忘れないようにしましょう。

たとえば不妊治療の通院の特徴として、直前にならないと通院の必要性が確定できないことや、病院によっては待ち時間が長く、細かな予定が立てづらいことがあげられます。このような細かいことを伝えておかないと、「治療中とは聞いていたけれど、今日の明日に休むなんて」と結局無駄な軋轢のきっかけになってしまうかもしれません。仕事によっては、直前まで予定が立てにくいことを伝えてさえおけば、その期間に柔軟なスケジュール変更ができるように仕事を組んでおくことが可能な場合もあるでしょう。

通院回数を減らせるよう病院と相談してみる

会社側へのアプローチだけでなく、病院側にアプローチすることで通院回数をへらすことができる場合があります。たとえば体外受精での通院頻度が大きく上がる理由のひとつに、注射によるホルモン剤の投与があります。体の状況や薬の種類によっては、排卵までの間に毎日注射を打つ必要があるという場合があります。しかし、病院によってはこの注射を自己注射といって、自分での注射にしてもらうことが可能になることもあります。

また、移植周期にも薬を使ってコントロールしながら移植準備を進めるほうが、スケジュールの調整がしやすくなります。

不妊治療のために仕事を辞めるのは慎重に考えて

もともと仕事に大きなこだわりがないという人や、一時的に不妊治療に集中したいと考える人なら、治療のために無理して仕事を続けていく必要はないかもしれません。実際、ストレスは自律神経の乱れを引き起こしやすく、これがホルモンバランスが崩れる原因になり、排卵機能に影響を与えてしまうことも否定はできません。

しかし、いざ不妊治療が始まってみると、治療によって精神的に追い詰められていく人もいます。お金のためだけでなく、治療や家庭のことから離れる時間として仕事をしていることでかえってストレスがたまらないということは大いにあり得ます。

プライベートなことを職場に伝えること自体気が進まないという人も十分に理解はできますが、いざ不妊治療のことを伝えてみると職場に治療中の人が他にもいたり、思ったよりも柔軟な対応をしてくれたりという良い方向に進むこともあります。一方で、心無い言葉を受けた人や、はれものに触るような扱いに居心地が悪くなってしまったと感じる人もいるため、職場へのカミングアウト自体はどちらが良いとも言い切れません。

不妊治療と仕事との両立については、子供ができたあとのことやライフプランも考えながら、慎重に検討が必要です。そのうえで職場の理解をどのように得て、どのように仕事とのバランスを取るのかということは、治療や職場の状況に合わせて考えてみてください。

 

 

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