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効率的な『葉酸』の摂取方法と、サプリメントの選び方

川口 優太郎先生

『葉酸』は積極的に摂取したい栄養素
『葉酸』は「妊娠しやすくなる栄養素」ではなく、「赤ちゃんが健康に育つための栄養素」です。
『葉酸』は水溶性ビタミンなので、少しばかり多く摂取してしまっても(もちろん超過剰摂取は論外ですが)尿と一緒に排出されてしまいます。
母体や胎児に良い影響を与えることはあっても、悪影響を及ぼすことはほとんどないと考えられるので、積極的に摂取していきたい栄養素です。
厚生労働省の基準によると一日に必要な葉酸摂取量は、成人女性で240μg、妊婦さんでは通常の倍の480μg、妊活中女性ではさらに多く、640μgの摂取が推奨されています。
『葉酸』を多く含む食品には、ほうれん草やブロッコリー、アスパラガスなどが挙げられます。
葉酸の摂取は容易ではない
ただし一日に必要とされている量を野菜から摂取しようと思ったら、ほうれん草で約9束、ブロッコリーでは1個半を丸々、アスパラガスでは15~20本を食べ続けなければいけません。
さらに『葉酸』は『水溶性のビタミン』であるため、水に溶けやすく熱に弱いと言った性質を持っています。
そのため頑張って食事を摂ったとしても、ほとんど生の状態で食べない限り、実際の摂取量は大幅に低減されてしまいます。
ちなみに、平成28年度 厚生労働省 国民健康・栄養調査によると 、日本人女性の多くが一日に必要なビタミン・ミネラルの推奨摂取量を満たしておらず、1日の野菜摂取目標量350gを摂取できているのは、日本人女性全体のわずか17%ほどであると報告されています。
このようなデータからもわかるように、妊活中の女性が摂取するべき葉酸の推奨量を、食事のみで摂取するのは容易なことではないのです。
効率的に『葉酸』を摂取するには?
そこで有用になるのが、前回もお話しした『サプリメントで付加的に摂取すること』です。
あくまでも栄養バランスの良い食事を摂ることが大前提ですが、摂取が難しく不足しがちな『葉酸』をサプリメントなどで補うことは、国も推奨しています。
一方で、「葉酸を摂らなければいけない」ことは知っていて、すでに『葉酸』のサプリメントを飲んでいるという方でも、実は「葉酸だけを摂取してもあまり意味が無い」ということをご存知の方は少ないのではないでしょうか?
葉酸の吸収に不可欠なビタミン
人間の体内で行われている代謝の一つにメチオニン代謝があります。
『葉酸』はこのメチオニン代謝に深く関わっており、メチオニン代謝が正常に行われないと動脈硬化や心筋梗塞の原因になると考えられています。
メチオニン代謝には『葉酸』の他、『ビタミンB6』と『ビタミンB12』が必要不可欠であり、『葉酸』の吸収を『ビタミンB6とB12』が助けていると言われています。
それぞれの栄養素は助け合いながら働いていますので、どれか一つを多く摂る、あるいは反対に一つが不足してしまうと体内で正常な働きが出来なくなってしまいます。
そのためビタミン・ミネラルなどをバランスよく、そして過不足なく摂取することが重要なのです。
サプリメント選びの注意点
サプリメントを選ぶ際の注意点としては、
- 『葉酸』が少なくとも400μg以上入っていること
- ビタミンB6・B12が一緒に添加されていること
- その他ビタミンや鉄、亜鉛といったミネラルがバランス良く入っていること
に留意していただけたらと思います。
反対に避けていただきたいものもあります。
それは“美容成分配合”などと記載されているサプリメントです。
配合されている美容成分の多くは、イソフラボンやザクロエキスといったものであるかと思います。
これらの成分はいわゆる女性ホルモンと似た構造をしており、女性ホルモンと同様の作用を示すことが知られています。
若い女性が美容のために、あるいは女性ホルモンが不足してくる高齢の方が健康維持のために飲む分には問題ありませんが、妊娠を目指している方にはあまりお勧めできません。
“美容成分”を避けたい理由
妊娠の成立には、一つの周期において体内の内分泌系(ホルモン)が安定していることが非常に重要です。しかしながら、これらの成分は女性ホルモン同様の作用を示すため、時期によっては過剰に供給される状態、あるいは身体に必要の無いタイミングにもかかわらず分泌されている状態になってしまう可能性が考えられます。
また体外受精治療を行っている場合は、ホルモンをコントロールするお薬を使いますので、それらの作用を過剰にしてしまったり、反対に阻害してしまったりする可能性も出てきます。
妊娠するために必要なものは何か、そして自分自身に不足している栄養素を理解して、厚生労働省が推奨するような栄養バランスのとれた食事を摂って健康的な身体になることが、健康な赤ちゃん誕生への一番の近道になるのかもしれません。

川口 優太郎先生
埼玉医科大学を卒業後、総合病院勤務を経た後に、国際基督教大学(ICU)大学院博士前期課程へと進学。アーツ・サイエンス研究科にて生命科学を専攻。大学院修了後は、加藤レディスクリニック(新宿区)に勤務。同クリニックの系列病院となった中国上海永遠幸婦科医院生殖医学センターへ出向し、病院の立ち上げに携わるとともに、現地スタッフの育成・指導や培養室の運営などを行う。その後、2018年に東京都渋谷区に新規開院となった桜十字渋谷バースクリニックに培養室の立ち上げスタッフとして赴任。培養室主任を務め、指導要領の作製や培養室の運営管理とともに、生殖医療関連のセミナーにて講演を行うなど、精力的に活動。2020年に、総合的な妊活サポート行うリプロダクティブサポートファーム東京を設立し、代表に就任。