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体外受精も保険適応に! 不妊治療のステップアップ、どう選択する?

Marbera運営事務局

保険適応となった不妊治療
昨年の4月から不妊治療が保険適用となり早一年が過ぎました。
適応前は、検査や治療の一部のみ保険適用でしたが、これまで自費診療だった人工授精や体外受精などもついに保険適用の対象になったのです。
これにより高額でなかなか手が出せなかった体外受精も、かなり敷居が低くなったのではないでしょうか。
その一方で、国が認めていない薬剤や方法で治療した場合は、引き続き自費診療となっています。
どんな選択がベターなのか、医師と相談しながら夫婦で治療内容を決めていく必要があります。
そこで今回は、必ず行う基本的な検査と一般的な不妊治療のステップについてご紹介します。
基礎検査
一般的に女性は産婦人科、男性は泌尿器科で検査を受けることになります。
最近では産婦人科で男性の精液検査が出来るところも多く、とりあえず産婦人科で精液検査を実施して判断している場合もあります。
しかし、不妊原因の半分は男性にあるとも言われています。
産婦人科ではホルモン異常や精巣などの器質的な異常について診察しないケースが多いため、可能な限り泌尿器科や生殖医療専門医のいる施設での検査をお勧めします。
保険適用外でも不妊の原因を調べる検査はたくさんありますが、ここでは一般的な検査のみを取り上げます。
女性側の検査項目
問診 | 年齢、結婚、避妊期間、挙児希望期間(お子さんを望んでからの期間)月経周期、妊娠歴、毎月の性交回数、既往歴、身長・体重(BMI)、職業、喫煙歴、睡眠時間、食事内容などの生活習慣 |
基礎体温(BBT) | 診察3の3カ月前からの測定開始をお勧めします |
血液検査 | 一般血液検査:貧血がないか、腎機能・肝機能・糖代謝などに異常はないか確認します ホルモン検査:月経周期に合わせ、脳下垂体から分泌されるホルモン、卵巣から分泌されるホルモンの状態を確認します |
頸管粘液検査 | 排卵前は子宮頸管粘液の分泌が増加します。その状態を確認することで排卵間かどうかを予測します |
フーナーテスト | 簡単に言うと、女性の頸管粘液の中で精子が生存しているかどうかを顕微鏡で見る検査です |
子宮卵管造影検査 | 子宮の大きさや形を見る他に、卵管の通過性を確認します。 |
内診・超音波検査 | 子宮の形態、子宮内膜の厚さ、卵胞の発育の状態、排卵の有無などを診ます |
子宮頸がん検査 | 不妊治療に入る前に、がんの有無を確認します |
クラミジア検査 | 女性はクラミジアに感染していても無症状のことが多く、検査で分かる場合が多いです。クラミジアの感染で卵管がつまったり、腹腔内との癒着を認める場合もあります |
AMH(抗ミュラー管ホルモン)検査 | 卵巣内には発育途中の卵子の元がたくさんプールされています。卵子の元は毎月減っていくのですが、その残っている数の指標になる検査です |
必要時に行う検査
- 腹腔鏡検査:子宮内膜症の状態や腹腔内の癒着の状態を確認します
- 子宮鏡検査:子宮卵管造影検査で異常を認めた際に子宮腔内の状態を検査します
- その他の検査:MRI検査など、さらに詳しい状態が必要であれば、検査していきます
男性側の検査項目
問診 | 年齢、結婚、避妊期間、挙児希望期間(お子さんを望んでからの期間)、性機能について(毎月の性交回数や勃起や射精の事など)、既往歴、生活習慣、 育毛剤の使用 の有無結婚歴、妊娠歴、お子さんを望んでからの期間、これまでの既往歴、身長・体重(BMI)、職業、喫煙歴、睡眠時間、食事内容などの生活習慣 |
触診・視診 | 精巣容量・精管の有無の触診、その他陰茎や睾丸の状態の視診 |
精液検査 | 禁欲期間2~7日で検査します。1回の検査では判定できないことが多いので最低でも2回検査を受けることをお勧めします。ちなみに精子の状態は、発熱やストレスでも影響を受けます |
超音波検査 | 精巣の大きさや、精巣腫瘍はないか、精索静脈瘤の有無を調べます |
血液検査 | 一般血液検査:貧血がないか、腎機能・肝機能・糖代謝などに異常はないか確認します ホルモン検査:脳下垂体から分泌されるホルモン、精巣から分泌されるホルモンの状態を確認します |
必要時に行う検査
無精子症や乏精子症の場合に行います
- 染色体検査
- Y 染色体微小欠失検査
一般的な治療ステップ

女性の場合、一連の基礎検査で自身の状態をチェックするのと同時にタイミング法を始めます。
原因がはっきりした場合は、そちらの治療を行ってから次のステップに進むのが一般的です。
治療の選択肢は状況により検討していきます。
治療を進めるのも、お休みするのも、別の選択肢を検討するのも、ふたりで決めることができます。
Marberaのプログラムを活用しながら、より良い方向性を選んでいきましょう。
不妊治療の実際
【一般不妊治療】
保険適用となって大きく変わったのが、一般不妊治療の管理料です。
こちらは3カ月に1回算定され、保険点数250点、自己負担分として750円かかります。
また保険適用となるにあたり、初回診察時には、
- 当該患者及びそのパートナーが「婚姻関係にある」こと
- 「治療の結果、出生した子について認知を行う意向がある」こと
が確認されます。
さらに制度改正で人工授精も保険適用の対象になりました。
こちらは、保険点数1820点、自己負担分として5460円かかります。
1)タイミング法
排卵は、ほとんどの方がひと月に1回起こります。
自宅ではそのタイミングが分かりづらいので、超音波検査や尿検査、頸管粘液検査等を行って排卵日を推定し、効率的に夫婦生活を持てるようにします。
2)内服や注射による排卵誘発を併用する治療
クロミフェン等の内服薬や注射薬による排卵誘発剤を使用し、卵胞を育てていく方法です。
内服薬の副作用では長期投与により、子宮内膜が薄くなったり頸管粘液が少なくなったりすることがあります。
また排卵数の増加に伴い、多胎妊娠の可能性があります。
注射薬でも多胎妊娠の可能性はありますし、卵巣過剰刺激症候群を起こすこともあります。
3)人工授精
排卵日に合わせて洗浄濃縮した元気な運動精子を直接子宮内に入れる方法です。
人工授精、1 周期当たりの妊娠率は自然周期の場合4%、内服療法併用で7%、注射療法を併用すると14%と言われています。
なお受精の場は卵管膨大部であるため、子宮卵管造影検査で卵管通過障害がないことを確認します。
また人工授精を選択した場合は、事前に精液検査で精子の状態も確認する必要があります。
【生殖補助医療(ART:体外受精・顕微授精・胚移植のこと)】
一般不妊治療ではなかなか妊娠に至らないという場合には、生殖補助医療という選択もあります。
あらかじめどのような治療か理解したうえで夫婦で話し合っておけば、治療の進め方をスムーズに選択できることでしょう。
以下の治療については、日本生殖医学会の一般の方対象Q& A から抜粋していますので参考にしてみてください。
(1)体外受精・胚移植(IVF-ET)
採卵により卵子を体外に取り出し、精子と共存させる(媒精)ことにより得られた受精卵を、数日培養後、子宮に移植する(胚移植)治療法です。最初は卵管の障害が原因の不妊治療に用いられてきましたが、現在はその他の不妊原因の治療としても使われています。(2)顕微授精(卵細胞質内精子注入法、ICSI)
精子の数が少ない場合や運動率が低い場合などの男性不妊や、卵子の受精障害などの体外受精では受精が難しい場合に、卵子の中に細い針を用いて、精子を1個匹だけ人工的に入れて受精させる治療法です。(3)凍結胚・融解移植
体外受精を行った時に、得られた胚を凍らせてとっておき、その胚をとかして移植することにより、身体に負担のかかる採卵を避けながら、効率的に妊娠の機会を増やすことができます。移植する胚の数を1つにしておけば、多胎妊娠となるリスクを減らすことができます。また、胚を凍結することにより、卵巣過剰刺激症候群の悪化を防ぐことができ、着床に適した内膜が得られた周期に移植を行うことが可能となります。
「採卵」においては、採取される卵子の数で料金が変わる施設が多いかもしれません。
その後の受精卵の数で、培養(受精卵を育てること)の料金や凍結胚の保存料金が変わります。
胚移植に関しては、新鮮胚移植か凍結融解胚移植かで料金が異なります。
アシステッドハッチング(胚が着床できるよう透明帯からの孵化<ハッチング>を補助<アシスト>する方法で、具体的には卵子の透明帯の一部を薄くしたり切開したりする技術のこと)や高濃度ヒアルロン酸含有培養液を選択すると追加費用がかかります。
まとめ

保険の適用範囲が広がったことで、生殖補助医療は以前より経済的負担がかなり少なくなると予測されます。
これから治療を始める方にとって、チャレンジしやすい環境になったと言えるのではないでしょうか。
一方で既に治療中で保険適用外の薬剤を使用している場合には、自費診療で自分に合った薬剤を使用するのか、保険適用の薬剤に切り替えるのかを検討する必要があります。
生殖補助医療でも、月に1回、生殖補助医療管理料が発生します。
相談対応の専任者が配置されている場合は、保険点数300点、自己負担分900円、それ以外では保険点数250点、自己負担分750円となります。
この管理料が発生することで、自分たちの受けている治療に対して積極的に夫婦で話し合うようになりますし、チャレンジするかどうか、何回までにするか、具体的に決める機会にもなるでしょう。
保険適用はまだ不明なことも多いですが、通院の際にはあらかじめ必要となる情報を集めておきましょう。

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