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娘や義娘が不妊かも?早く孫が見たいけど、どうしたらいい?

Marbera運営事務局

そもそも不妊とは?
子供の結婚にあたり、「早く孫が見たい」という気持ちが大きくなる親御さんはたくさんいます。知り合いや友達と集まったときに、孫トークで盛り上がる機会も増えてくるのではないでしょうか?
妊娠に際して特に大きな困難がなく順調に出産を経験してきた人にとっては、不妊というのは未知の世界です。また、過去に不妊に悩んだことがある親御さんだとしても、結婚や妊娠に関する考え方は世代によって異なるため、理解に温度差が生じることもよくあります。
しかし不妊に限らず、そもそも妊娠や出産というのはデリケートな話なので、それをきっかけに関係がこじれてしまったという話も耳にします。まずは不妊の定義などを理解した上で、親としてどう接していくべきなのかを考えてみましょう。
不妊の定義
不妊というのは、健康な男女が妊娠を希望して性行為を行っているものの、一定期間妊娠できない状態を指します。一定期間というのは基本的に一年を目安とすることが一般的です。ただし、不妊でなくとも女性が年齢を重ねると妊娠力は落ちていきます。そのため、30歳を超えている場合には治療にかけられる時間が少なくなってくることから、半年が経過したら一度検査をすべきと考える医師もいます。
また、検査によって何らかの原因が特定できる場合とそうでない場合があります。日々進歩している生殖医療ではありますが、まだまだ解明されていないことが多く、現段階では原因がわからないものの妊娠しにくい、あるいは妊娠できない、というケースがあるからです。つまり、原因がみつからなかったからといって不妊ではないとも言い切れないということです。
不妊に悩むカップルは多い
昔に比べて平均初婚年齢が高くなった影響などもあり、厚生労働省の調べによると不妊を心配したことがある夫婦は全体の35%にも及ぶことがわかっています。さらに、全体の約18%の夫婦は実際に何らかの不妊検査を受けたことがあると回答しています。
また、特に年齢を重ねた親御さんにありがちなことで、不妊の原因が女性にあると考える人も多いようですが、実際には夫婦双方に原因がある場合も含めると、不妊の原因が男性にある場合というのは全体の不妊の約半数にのぼるということも知っていただきたいと思います。
子供を持たないという選択をする夫婦も増えている
もちろん、子供がいない夫婦のすべてが不妊に該当するわけではありません。
特に日本では、以前は社会で働く女性が少なく、結婚したら女性は家庭を守るものと考える風潮がありました。それに伴い、結婚したら子供を産むということに疑問を持つ人は少なかったようです。
しかし、女性の社会進出や価値観の多様性が進む中で、選択的に子供を持たないという夫婦が増えているのも事実です。親としては孫を抱いてみたいという思いがあったとしても、子供を産むということだけが幸せの形とは限らず、それは個々の夫婦の価値観として尊重されるべきだということも理解する必要があります。
不妊治療とは
では、そもそも不妊治療とはどういうものでしょうか?ここでは、方法だけではなくそれに伴う通院頻度や費用など、治療を受ける人にとってどんな負担がかかるのかを具体的に説明します。
不妊検査でみつかった原因によっては「体外受精でないと妊娠が難しい」というような場合があります。しかし、それ以外で特に強い希望がなければ、一般的にはタイミング法から治療を開始し、それでも妊娠しないようであれば人工授精、体外受精へと進んでいきます。これを治療のステップアップと言います。
それぞれの方法別に詳しく説明します。
タイミング法
多くの女性が知っていることではありますが、妊娠というのは排卵と密接に関係しています。大体28~30日程度の周期で排卵が訪れる女性が多く、妊娠可能な時期というのは実はこの排卵日付近のわずか2~3日だけです。そのため、妊娠するためにはこの2~3日の間に性行為をし、さらに性行為によって出会った精子と卵子がうまく受精、そして子宮内に着床しなければ妊娠は成立しません。
排卵の周期は人によって異なり、さらにはストレスや体調などの影響を受けて左右しやすいものです。そのため、医師の診察を受けて確実に排卵日を特定し、性行為をするタイミング指導を受けるのがタイミング法です。
通院頻度は月に1~2回程度で、通院1回あたり1万円~2万円程度の費用がかかります。場合によってはホルモン剤を投与して卵胞の発育を良くしたり、排卵誘発剤を使用してより確実に排卵を起こすことがあり、筋肉注射を使用する際には強い痛みを伴います。
人工授精(AIH)
人工授精では、容器内に取り出した精子を洗浄、濃縮してからカテーテルを使用して直接子宮内に注入します。卵管に詰まりがある場合や、射精障害を始めとして精子に問題がある場合には有効です。しかし、受精や着床については自然に任せる形になるため、原因がわからないもののタイミング法でも妊娠できなかった場合、効果が得られにくいことも多いです。
1周期あたり2~3回の通院が一般的で、1回の通院には約1万円~2万円、人工授精の実施自体には約2万円~3万円がかかります。人工授精自体にはあまり痛みはありませんが、タイミング法同様卵胞を育てるための筋肉注射は強い痛みを伴います。
体外受精(IVF、ICSI)
体外受精とは、端的に言うと卵子も精子も一度体から取り出して受精させてから子宮内に移植する方法です。卵子を体外に取り出すことを採卵といいますが、クリニックの方針や患者の希望にあわせ、卵巣を刺激しながら複数の卵子の採卵を目指すこともあります。この卵巣刺激の過程は人によって異なり、場合によっては1週間以上毎日筋肉注射を打つこともあります。
さらに、卵巣刺激から採卵、移植までの費用は最低でも50万円ぐらいで、場合によっては100万円以上にのぼることもあります。また、卵巣刺激の筋肉注射以外にも、複数の飲み薬や貼り薬を使用することが多く、これは飲む時間や貼り替えの時間も細かく管理する必要があります。さらに、受精卵の移植自体は人工授精同様あまり痛みを伴うものではありませんが、採卵は直接子宮に針を刺す手術であり、無麻酔で行う場合には人によって激しい痛みを感じることも珍しくありません。
娘や義娘が不妊治療をするときにサポートできること
不妊治療の内容が簡単にわかったところで、実際親として娘や義娘が不妊治療を進める際に何ができるのか、治療を受けている当事者として何をしてもらうと助かるか、ということを説明します。
金銭的サポート
30歳を超えると、女性の体はそれまでと比べて徐々に妊娠しにくくなっていきます。そのため、妊娠を目指すのも不妊治療をするのも、早期から取り組むに越したことはありません。しかし実際には30代での結婚が増えただけでなく、高額な費用がかかる不妊治療は20代の夫婦には難しいという現実もあります。
タイミング法や人工授精のような数万円という金額でも、20代夫婦の収入から継続的に捻出するのは容易ではありません。その上不妊治療というのは、いくら頑張っても結果につながらない可能性があるものです。そのような状況で、体外受精のようにさらに高額な費用がかかるものは、年齢に関わらずハードルが高いのは言うまでもありません。
不妊治療は費用面での懸念が大きな課題となるため、両親から金銭面でのサポートを受けて治療をしているという人もいます。(ちなみにベビmatchを運営している代表夫婦も妻の父親からの金銭的なサポートがありました。そのストーリーはまた次回お話しますね。)
メンタル面でのケア
不妊治療は、特に女性にとってとても孤独な戦いです。思うように妊娠ができないことで、自分に自信が持てなくなってしまうだけでなく、焦りや疲れ、そして生理がくるたびに失望といったように、日々様々な負の感情を抱いています。たとえ男性側に原因があるケースでも、基本的には通院や投薬の負担が女性に偏りがちなうえに、やはり性別が違うが故に男性には理解しきれない痛みや気持ちというものがあります。夫婦間のデリケートな問題なので他人に話しにくく、相談できる人が少ないことで気持ちのはけ口をみつけられずにいる人もたくさんいます。
もちろん親子の関係性にもよりますが、やはり実母にならば妊娠に関する悩みを相談しやすく話しやすいという女性が多いようです。無理に励ましたり必要以上のアドバイスをする必要はなく、いつでも話を聞いてくれる人がいるということだけでも安心材料になります。
時間的サポート
特に体外受精では1ヶ月の通院回数が10回を超えることもあり、仕事や家庭との両立に困難を抱える女性がたくさんいます。さらに、不妊治療を受けるのは第一子妊娠のためとは限らず、第二子以降を希望しての治療の場合はそこに育児も加わることになります。
仕事を代わることはできませんが、通院にあわせて必要な家事や育児のサポートをすることで、結果的には通院時間の確保に繋がります。
娘や義娘が不妊治療をする際の注意点
不妊治療というのは、なかなか当事者にしかわからない感情というものがあります。そのため、周囲にとっては良かれと思ってやっている行動が、治療当事者につらい重いをさせてしまうということも出てきてしまいます。
支えていきたいという気持ちが空回りしてしまわないように、妊活中の人や不妊治療中の人の家族が注意してあげてほしいことをいくつか紹介します。
先回りした意見をしない
妊娠を望んでいる人にとって、親はたしかに経験者であり「妊娠の先輩」です。しかし、何度も繰り返しになってしまいますが、妊娠しない原因は人によって様々です。特にすでに不妊治療を受けている人は、妊娠や生殖医療に関して自主的にたくさんのことを調べ、自分でできることは一通りやったもののそれでも妊娠できないから治療に至ったというケースも多いです。
そのような治療当事者にとっては「こうしたら妊娠しやすくなる」という話であっても、科学的根拠のない不確かな話を耳にすれば、無責任に聞こえてしまうこともあります。
もちろんアドバイスを求められれば自分の考えを伝えることは大切ですが、そうでない場合には治療のアドバイスは医師に任せ、意見をするのではなくとにかく「話を聞く」立場でいられるように心がけましょう。
言われたくない言葉を理解する
望んでいるのに妊娠ができないという状況にいると、想像以上に様々な言葉に傷つきやすくなります。たとえば「子供はまだなの?」という質問は、わかりやすいでしょう。本人が一番子供を望んでいるのに、予定を聞かれたり急かされたりしてもどうしようもありません。
そのほかには、他の人の妊娠報告も複雑な気持ちになります。決して他の人の妊娠が嫌だというわけではなく、「どうして自分だけ妊娠できないんだろう?」と考えてしまったり焦ったりという原因になり、さらにはそんなことを思ってしまう自分自身を責めるということも少なくありません。
もうひとつ、心配するが故に親が言ってしまいがちなのが、今後の話です。「子供がいない人生も幸せ」「養子という方法もある」など、気持ちを楽にさせてあげたい一心で言ってしまうことがあります。
しかし、妊娠を諦めていない状況で言われてしまうと、諦めることを進められているような気持ちになる人もいます。また、愛する人の子供がほしいという思いを持っている人にとって、妊娠と養子はまったく別の話です。妊娠や出産に関する今後のことは、我が子であっても夫婦にしか決められないことだと理解しましょう。
色々な選択肢を想定する
ここまでは、具体的な対応方法をお伝えしてきました。けれども、そもそも考え方や気の持ち方によって相手に接する方法は変わってくるものです。
重要なことは、そもそも親御さんが色々な選択肢を想像し、子供夫婦の価値観を尊重するということです。もちろん不妊治療のサポートをしたいのは、子供自身が妊娠を望んでいるからという理由が一番大きいものでしょう。しかし、自分自身もどこかで「子供がいたほうが幸せ」というステレオタイプに当てはめてしまっているという人もいるのではないでしょうか。
子供の望みをなんとか叶えたい、孫を抱きたいと思うことが悪いことではありません。しかし、それ以外の結果や選択もあるということを知り、自分の気持ちを整理してみてください。
不妊は当事者が一番つらい
妊娠できないことというのは、当事者同士が一番つらいものです。治療の内容や体の状況は人によって違うため、たとえ同じように悩んでいる人同士でもわかりあえないことが必ずあります。
そして、親に孫を抱かせてあげられないことということに負い目を感じている人はたくさんいます。
親としてなにかできないかを積極的に探すのであれば、まずはその状況や気持ちを理解し、受け皿となってもらえるということが一番大きな援助になるはずです。

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