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体外受精後の妊娠ってどんな気持ち?「まだ喜べない」と思う人が多い理由は?

Marbera運営事務局

すでに不妊治療を受けている人であれば多くの人がご存知かもしれませんが、2021年9月の現時点では日本での不妊治療は保険適用外の治療になっています。そのため治療に対する明確なガイドラインが決まっておらず、病院ごとに様々な方針、費用設計で進めているのが実情です。

そんな背景もあり、患者の多くが生殖医療や不妊治療に関する情報を集めなければいけない状況にありますが、専門知識がない状態で情報収集を行うと情報の取捨選択が難しく、今度は情報に惑わされてしまう可能性が出てくるというのが大きな課題のひとつでもあります。

他の人がどのような治療を受けて、どのような成功率で妊娠してくのかということや、どのぐらいの費用をかけているのかということも当事者にとっては気になる内容のひとつです。他の人の治療内容との比較は、治療継続の有無や病院選びにとても参考になります。その反面、そもそも妊娠というものは年齢や個々人の健康状態に大きく影響を受けるものであり、他人とは簡単に比較できるものではありません。

体外受精後の妊娠について

体外受精は一度の採卵から移植までに50万円から100万円という高額な費用がかかります。また、男女ともに若いうちの卵子や精子のほうが妊娠しやすいということもわかっています。そのため、たとえばなかなか妊娠に至らないことが続くと「自分は本当に妊娠できるのだろうか」という焦りや不安が大きくなり、他の人がどれぐらいの回数で妊娠できるのか、ということが気になってくる人もいるでしょう。

体外受精の平均回数

体外受精で妊娠できる人の場合、平均的には3回以内に妊娠した人が多いというデータがあります。そのため、体外受精を3回以上受けても妊娠できない人を難治性不妊と定義しています。しかし、細かくいえばたとえば20代の人と40代の人では治療成績に大きな違いがあったり、もちろん一度で妊娠する人もいれば残念ながら何度も繰り返した結果妊娠に至らない人もいたりと、「平均」としてまとめて考えるには難しい点があります。

また、この「平均回数」というのも、一度の移植あたりで数えるのか一度の採卵数で数えるのかという違いがあります。体外受精というのは、簡単にいいうと精子と卵子を一度体外に取り出し、受精卵にした上で子宮内に戻し、あとは着床するのを待つだけの状態にする治療です。卵子を体外に取り出すことを採卵、受精卵を子宮内も戻すことを移植といいいますが、そもそも受精卵になった卵や受精卵になって着床しやすい状態まで育った卵しか移植の対象にはなりません。

そもそも卵子がなかなか育たない人や、受精卵になりにくい人の場合、移植の前に数ヶ月、数年という時間を費やしている可能性は否定できません。しかし、移植あたりの成績だけで見れば、一度の移植で妊娠したという結果だけが記録として残ることになります。

妊娠と出産はイコールではない

不妊治療当事者が見落としがちなことのひとつに、妊娠と出産がイコールではない、という事実があります。妊娠したすべての人が出産に至るわけではないということですが、この事実自体は不妊治療後の妊娠かそうでないかには関係ありません。しかし、不妊治療の大きな課題のひとつに、妊娠と出産が分断されてしまいがちだということが挙げられます。それに伴い、患者自身が得られる情報も妊娠に関することの比重が大きくなり、出産に関する情報が少なくなりがちです。不妊治療を受けている間は当然「妊娠すること」が一番の目標になりますが、そもそも妊娠というのは出産までの一つの過程にすぎず、不妊治療を受けている誰もが厳密には「妊娠」ではなく「出産」を目指しているということです。

一方で、「不妊治療の成功」というのが何を意味しているのかということを考えてみましょう。わかりやすい例として、不妊治療を専門としている病院の中には、成功報酬制度をとっている病院があります。これは、治療にかかる薬剤などの実費や一部費用は支払う必要があるものの、残りの費用は妊娠が成立した時点で支払うというものです。この場合、妊娠できなかった場合は残りの費用は支払う必要がありません。

このとき「妊娠したか否か」というのは、最初の妊娠判定で陽性反応が出たか(hCGが検出できたか)ということを基準にしている場合や、胎児心拍が確認できたか(9~10週頃)ということを基準にしている場合があります。確かに流産の多くが胎児心拍確認前のケースが多いのですが、10週以降に流産や早産が起きるということも決して珍しいことではありません。しかし、成功報酬制度では病院の基準を満たしている妊娠に関してはすべて「成功」の中にカウントされてしまいます。

つまり、不妊治療というのはあくまでも妊娠するまでの状態をフォローするものであり、妊娠が成功ということになります。しかし患者にとっては、出産できなければ決して成功とはいえないはずです。

生殖医療に関する様々な論文やデータを見てみると、妊娠に至るまでの可能性や経過だけでなく、その後の出産率などに関するものが存在します。いろいろな要素が関わってくるため一概には比較できないものですが、着床率だけでなく、流産率や出産率なども踏まえた上で治療方針を決めていくことも重要です。

体外受精後の妊娠がまだ喜べない理由

体外受精で妊娠した人の多くが、妊娠陽性判定の直後には不安が大きくただ喜ばしいというだけの気持ちだけではいられない傾向があります。

自然妊娠に比べ、体外受精後の妊娠ですぐに喜べない理由を客観的に見つめ、対処につとめましょう。

流産または早産の経験がある

実は体外受精での流産率は約20~25%というデータがあります。これは自然妊娠での流産率約10%という数字と比較すると、格段に高いと思いませんか?

明確な理由はわかっていませんが、大きく2つの原因が考えられます。ひとつめは、流産の確率が高いというよりは「流産に気がつく確率が高い」ということです。流産のひとつに「化学流産」と呼ばれるものがあります。これは「医学的に妊娠したと判定される前に流産してしまうこと」です。

一般的には生理が予定どおり来ないことで妊娠に気がつくケースが多く、その後病院で胎嚢という赤ちゃんが育つための部屋を子宮内で確認した時点で、医学的にも妊娠が成立したと認められます。妊娠検査薬というのはhCGというホルモンが検出されると陽性判定が出る仕組みです。hCGは着床すると分泌され始めますが、その後順調に育たず妊娠を継続できないことはとても多いと考えられています。その場合、hCGの分泌が止まり、やがて生理がくることになります。妊娠検査薬をしていなければ、いつもより遅れて重たい生理がきたと思い込むことがほとんどです。

しかし、体外受精では決められた日程で妊娠判定が行われ、通常妊娠に気がつかないような早さで妊娠判定を行うことでその後の経過に必要なホルモンなどを補充する場合があります。そのため、本来だったら化学流産として気が付かれない着床にも気がついてしまうことになります。

もうひとつの理由は、人為的に受精させることで本来受精が難しいようなケースでも受精が成立してしまう可能性が考えられます。早期の流産の場合、その原因のほとんどは染色体異常によるものです。本来染色体異常がある受精卵は育ちにくく、受精卵になった直後で分割が止まって着床しなかったり、そもそも受精卵にならなかったりすることが多いです。しかしひとつの仮説として考えられるのは、体外受精ではできるだけ受精しやすい環境で培養を続けるため、人為的な作業が介入しなければそもそも育たなかった受精卵が育ち、着床まではしたもののその後妊娠継続できるほどの力が受精卵になかったということです。

これらの理由を背景に体外受精では流産が多く、複数回体外受精にチャレンジしている人は妊娠までに流産を経験している人が自然妊娠よりも多いということになります。流産というのは当事者にとって、他人が想像できないほどのつらさであり、それがトラウマになってしまうと妊娠とともに流産の不安がつきまとうことになります。

情報過多になり、不安な情報も入りやすい

すでにお伝えしたように、不妊治療の経験者は他の人の治療や妊娠に関する情報に触れる機会が多くなりがちです。その上そもそも体外受精に流産が多いということになれば、多くの人の経験を参考にしようとすればするほど、流産や早産など、悲しい結果になってしまった話に接する機会も多くなります。

また、体外受精そのものが流産に関係しているかどうかは不確定ではあるものの、いずれにせよ体外受精のほうが自然妊娠より流産率が高いと知れば、それだけで不安要素のひとつに考えてしまう人もいるでしょう。

不妊治療によりマイナス思考になっている

国立成育医療研究センターの研究では、不妊治療の中でも体外受精の初期段階、またはこれから受けようと考えている人の半数以上に軽度の抑うつ症状が見られることがわかりました。不妊治療というのは、患者や医者の努力だけで必ずしも結果に結びつくものではありません。また、生殖医療にはまだ解明されていないことも多く、明らかな原因がわからないのに妊娠できなかったり流産を繰り返したりということも珍しくありません。

しかし、医師のいう通りのタイミングに合わせて夫婦生活を持つたび、もしくは人工授精や体外受精を行うたびに、子供を熱望している人は少なからず結果を期待するものです。また、治療がステップアップするときには、負担も増えますが妊娠に向けての新たなアプローチができることで妊娠が近づいたような気持ちにもなります。

そのたびに妊娠できないという結果が続くうちに、あまりにも大きなメンタル面での負担から、不妊治療当事者は「できるだけ期待しないこと」を心がけるようになることが多いです。体外受精で妊娠するなんて本当は嘘なんじゃないか、他の人が妊娠できても自分はできないんじゃないか、それでも体外受精をしないと可能性はゼロだからやってみよう、でもどうせ今回もダメだけど…そんな風に、期待する気持ちをできるだけ打ち消しながら前に進んでいます。

思考のパターンというのは癖になるものなので、体外受精を経験して妊娠した人の多くが、出産間近になっても「実感がわかない」「本当に自分が妊娠するとは思えない」と感じているようです。

体外受精後の妊娠でも不安にならないで

不妊治療を受けてきた人であれば、妊娠、そして出産というのがいかに奇跡的なものだか痛感しているのではないでしょうか。

先述の通り、流産の原因はその多くが受精卵側にあるもので、母体による原因は少ないです。つまり、流産を防ぐためにできることは少ないということでもあります。確かに妊娠できても無事に出産するまでは、不安が完全に消えるということは難しいかもしれません。しかし、できることが少ないのであれば、せっかくの奇跡を大切にしながらその幸せな時間を大事に過ごしていきましょう。

母体にストレスがかからないことはもちろんのこと、血流をよくしたり、胎内の環境を良くするためにも重要なことです。体の変化にとまどうことも増えるかもしれませんが、周囲の力を借りながら、幸せな妊娠生活を満喫できると良いですね。

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