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不妊の今、赤ちゃんを見たくない…。つらい気持ちの対処法

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不妊治療初期の女性の半数以上に抑うつ症状がある

2021年に発表された国立成育医療研究センターの調査結果では、不妊治療の初期段階にいる半数以上の女性に抑うつ症状があるということが明らかになりました。

こちらの調査では体外受精のような高度不妊治療を受けている女性が対象ではありますが、高度不妊治療を受けるまでの過程では他の不妊治療や自己流の妊活に励んでいることも多く、同数とはいえなくとも治療を受ける前の妊活中女性にも一定数精神的な負担がかかっていることは想像できます。

高度不妊治療は平均でも1回約50万円という高額な費用がかかり、病院や治療内容によっては100万円以上かかることもあります。もちろん家計を圧迫するような金額をかけているものの結果が得られないということも精神的負担のひとつではありますが、妊娠を望んでいる女性が妊娠できないということは、それ以外にもつらい思いをする場面がたくさんあります。

妊活や不妊治療中は些細な言葉に傷つきやすい

最近では、不妊の原因が男女両方にある場合を含めると、男性側に不妊原因があるケースは不妊全体の半数ほどと考えられています。しかし、そもそも妊娠というのは排卵と特に密接な関係があり、女性側に原因がない場合でも排卵日前の一定期間において受精が成立しなければ妊娠に至りません。そのため、どうしても自分の月経周期を把握できる女性が妊活をリードしていくことになります。また、不妊治療においても投薬や通院の負担は女性に偏ることが多く、たとえ夫婦であってもそのつらさをパートナーに理解してもらえないことに悩む人も少なくありません。

さらに、男性に比べて女性の友達が多い分、友人や知人と結婚や妊娠についての話題になったり、誰かの妊娠報告や出産報告を聞いたりという機会も、男性より女声のほうが比較的多くなります。「気にしなければそのうちできるよ」「まだ若いんだから考えすぎないほうがいいよ」など、相手から考えれば深く考えずに言っていることや、優しさで言っていることであっても、妊娠に悩んでいる女性にとってはつらく聞こえてしまう言葉に気持ちが沈んでしまった経験がある人もいるのではないでしょうか。

不妊のせいで赤ちゃんを見たくない気持ちになることも

思うように妊娠できない期間が続いたり、不妊治療を初めるようになると、今までは気にならなかったような言葉に傷つくような、今まで抱いたことがない感情を抱くようになり、そんな自分が嫌になってしまうことがあります。

たとえば直接的な妊娠や出産に関する話題は特に精神的な負担になりがち。芸能人の妊娠や出産報告がつらい、友人の妊娠報告がつらいという人は多く、中には赤ちゃんを見たくないという人もいます。友人の妊娠報告に心から祝福の言葉を返せずに自己嫌悪を感じることで、さらに精神的負担を感じるという良くないループに陥ることもあります。

不妊が原因で赤ちゃんを見たくないときの対処法

まず第一に、不妊に悩んでいるときに赤ちゃんを見たくないという気持ちになる人は多く、自分だけではないと思ってください。しかし、実際に生活していて一度も赤ちゃんを見ないで生活しようとすれば、ほとんど家から出ることもなくなり、それはそれで追い詰められた気持ちになり得ます。ここでは、実際に赤ちゃんを見ずに済む方法ではなく、そんな気持ちになってしまったときにどうしたら少しでも楽な気分になれるかをお伝えします。

自分を責めないで

「子供が大好きだったのに、外を歩いていて赤ちゃんを見るだけでつらくなる」「親しい友人の妊娠報告ですら100%の気持ちで喜べない」。不妊に悩んでいる人であれば、多かれ少なかれそんな気持ちになる日があるかもしれません。自分でも知らなかった自分の醜い一面を見たようで、そんな風に思ってしまう自分を責めては苦しくなるものです。

けれども、それは決して自分のせいではありません。「自分がそんなひどい人間だった」というわけではなく、不妊という状態がそういう気持ちを引き起こしているに過ぎないのです。また、特に不妊治療で投薬を受けている人の場合は、薬の副作用が精神面にも影響することがあるためそれらの影響も考えられます。

赤ちゃんを見たくないという気持ちを抱いても、誰かの妊娠報告を心から喜べなくても、それ自体が悪いことではありません。無理に喜ぼうとする必要はどこにもありません。

赤ちゃんを見たくないと感じる人や妊娠報告がつらいと感じる人にその理由を聞いてみると、ほとんどの場合、赤ちゃんが嫌いなわけでも、報告してくる相手が嫌いなわけでもなく、ただ「どうして自分だけ赤ちゃんができないんだろう」と考えてしまうことが原因のようです。つまり、負の気持ちが相手に向いているわけではなく、自分に向かってしまうということ。他の人を妬む気持ちばかりが原因ではないということを理解して、自分を責めないようにしてください。

理解者を探す

不妊治療であれば開始時点でパートナーと話し合いをしている夫婦が多いのですが、妊活の時点ではまだしっかりと夫婦で話し合いができていないという人もたくさんいるようです。また、治療中であっても男性が治療の詳しい内容まで理解していないということも少なくはありません。

しかし、妊娠や出産は夫婦の問題であり、女性だけの問題ではありません。夫婦の目線をあわせるためにもまずは妊娠や出産について、夫婦でしっかりと話し合ってみましょう。パートナーの性格にもよりますが、メンタル面でもサポートをしてほしいこと、具体的にどんなサポートをしてほしいかを伝えておくことでパートナーが治療の理解者になってくれることもあり、夫婦で力をあわせて挑めるのであればそれが理想的です。

もちろん、性別の違いからパートナーになかなか理解してもらえないこともあります。その場合は、自分の家族や友人など、ありのままの気持ちを話すことができ、話すことにストレスを感じない相手を探してみましょう。この場合、家族やパートナー以外であれば妊活や不妊治療をしていない相手のほうが良い場合もあるということを覚えておきましょう。

妊活や不妊治療は人によって進め方も違い、もちろん結果も異なります。同じように妊活をしているもの同士のほうが話しやすいこともあるのは事実ですが、どちらかが先に妊娠した場合などにさらに精神的な負担になりかねないという側面もあります。

SNSとの付き合い方を見直す

赤ちゃんを見る機会は、外出先だけに限らないものですよね。SNSを通して知人の妊娠や出産を知ったり、育児中の知人がSNSで写真をアップすることも多々あります。最近ではSNSとの向き合い方も人それぞれなので、必ずしもすべての写真にアクションを取らないと相手の気分を損ねるということはありません。SNSがストレス解消のひとつになれば良いのですが、負担になるのであれば一度お休みするということも考えてみましょう。

また、匿名性の高いSNSを利用する場合には、妊活や不妊治療用のアカウントを作って治療仲間を作るということも可能です。当事者にしかわからない気持ちを理解しあうために、つらさを共有したり励まし合ったりすることで前向きな気持ちになれたという人もたくさんいます。

カウンセリングを利用する

欧米諸国に比べて日本では日常的にカウンセリングを利用している人が少ない傾向にあります。しかし、カウンセリングというのは決して病気の人のためにだけあるわけではなく、人とのコミュニケーションを円滑に進めたり、前向きに毎日を過ごしたりするために活用しても良いものです。

特に、妊活や不妊治療中の人であれば不妊カウンセラーに相談してみるのがおすすめです。

不妊カウンセラーは生殖医療に関わる人や専門知識を有する人であり、不妊に関する悩みを相談することができます。不妊治療を専門としている病院では不妊カウンセリングを受けられることもありますが、それ以外にも外部機関を利用することも可能です。

たとえば不妊をトータルでサポートするコミュニティサービスのベビmatchでは、複数の不妊カウンセラーから自分にあったカウンセラーを選択することができ、もちろんカウンセリングの内容は誰にも知られることはありません。赤ちゃんを見たくない気持ちになったときに他の人がどうしているのか、どうしたら少しでも気持ちが楽になるのかなど、相談してみると良いでしょう。

不妊による気持ちのモヤモヤは当然のこと

不妊というのは、それだけで想像以上に気持ちが追い詰められるものです。たとえ素直な気持ちを話せる相手がいても、また、同じように不妊で悩んでいる人同士でも、どこかわかりあえない自分なりのつらさというものがあり、それはとても孤独に感じてしまいます。

さらに、誰かに相談すると相手の思わぬ言葉に傷ついてしまい、人に話すことをやめてしまうということもあるでしょう。相手が優しさで言ってくれていることがわかっていても負の感情を持ってしまうことや、赤ちゃんを見て悲しい気持ちになってしまう自分が嫌になってしまうこともありますよね。

でも、相手が優しさで言ってくれている言葉であること、誰かの妊娠報告を祝福する気持ちがないわけではないということ、自分自身でそれだけわかっていれば今は十分です。励ましの言葉に心から前向きになれなくても、赤ちゃんを見ることや妊娠の報告に羨ましい気持ちになってしまうことも、それだけつらい毎日を送っているというだけのことです。

ストレスは体にも精神面にも良い影響を与えないもの。自分を許し、甘やかしてあげることで少しでも自分の負担を減らしてあげてください。

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