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最近話題の睡眠の質。不妊にも関係している!? | Marbera

川口 優太郎先生

川口 優太郎先生

2023/04/15

前回まで、ストレスが妊娠に及ぼす影響について、食生活などの生活習慣が深く関係していること、そして、正しい知識の下に改善を図っていくことで、健康な身体を作り妊娠率を向上させることができるとお伝えしました。

全国健康保険協会(協会けんぽ)のHPでも、生活習慣の改善方法として、「適度な運動を心がける」や、「禁煙は今すぐに!」「主菜は肉よりお魚を」などいくつかの改善案が示されています。
中でもストレスに直結するものとして挙げられているのが『睡眠の改善』についてです。

今回は、睡眠の質と不妊症の関係性について、最新の研究論文をいくつかご紹介しながらお話ししていきたいと思います。

睡眠の質が健康に与える影響

実は、過去半世紀の間に現代人の平均睡眠時間は1時間以上も短くなっていると言われています。
そして睡眠不足が生活習慣病のリスクを高めることが指摘されています。

当たり前ですが、睡眠時間が短くなると覚醒している時間が長くなるので、覚醒状態の時に活発になる交感神経が優位になります。

交感神経が優位になると緊張状態が作り出され、血圧が上昇するため、高血圧のリスクが高くなります。
また覚醒状態は食欲をコントロールする機構にも作用して、満腹中枢を鈍らせることが知られているため、肥満や糖尿病のリスクも増大します。

睡眠の質と不妊に関する研究

生殖医療の分野においても、“睡眠の質”が“卵子の質”に深く関係していることや、睡眠を著しく妨げる騒音環境が不妊を招く可能性があることが示唆されています。

2017年に、アメリカの生殖医学学会誌Fertility and Sterilityに発表された研究によると、「睡眠の質が低下すると卵子の質も低下する」という可能性が報告されています。

睡眠の質と卵子の質

この研究では、体外受精を行っている患者さんに睡眠の質についてのアンケート調査を行い、A群(良好な睡眠が取れている)、B群(やや睡眠不足である)、C群(重度の睡眠障害がある)の3つのグループに分けて、それぞれの患者さんの体外受精成績を比較検討しました。
すると、睡眠の質が悪いグループほど卵子の受精率が有意に低く、胚の発生率も有意に低かったと報告しています。

また、睡眠の質の段階が良くなるにつれて卵子の受精率や胚の発生率が上昇し、睡眠の質と治療成績が比例関係であったことなどから、睡眠の質が卵子の質に何らかの影響を与えている可能性が高いと考察しています。

夜間の騒音と不妊

睡眠の質と言っても、ただ単に睡眠時間が長ければ良いということでは無いようです。

環境汚染分野などの研究をまとめた国際学術誌Environmental Pollutionに発表されている論文によると、夜間の騒音環境への長期的な暴露が、不妊症と密接に関係していると指摘しています。

そもそも『騒音』は、世界保健機構(WHO)でも環境汚染の一つと認定されており、先行研究から、循環器系疾患や精神疾患などの健康問題と深く関連していることが指摘されています。
また、産婦人科分野に焦点を当てると、長期間の騒音環境への暴露によって、流産や早産が引き起こされる可能性も数多く報告されています。(※International Journal of Environmental Research and Public Health, 2014 Aug; 11(8): 7931–7952. Gordana Ristovska博士らの研究ほか) 

騒音が不妊症の原因に!?

韓国のソウル大学で予防医学を研究しているKyoung-BokMin博士らの研究チームは、55dBという比較的低レベルの騒音でも、長い期間に渡って暴露されると、不妊症を発症する原因になると指摘しています。

55dBとは、WHOが定める夜間騒音レベルで、真夜中に家の前を車が「サーッ!」と走り抜けていく音がだいたい55dB程度と考えてください。

Kyoung-BokMin博士は、韓国の国民健康保険データベースから対象者をランダムに抽出し、National Noise Information Systemが報告している騒音レベルに関するデータを下に、騒音レベルと騒音への暴露期間の調査・分析を行いました。

すると、長期間に渡って55dB以上の騒音に曝された人ほど、不妊と診断される可能性が有意に高く、夜間に騒音にさらされていた人ほどその傾向が大きかったとしています。

リラックスできる睡眠環境が大切

夜間に騒音にさらされることが不妊の原因となる可能性については、先述にある通り、眠りが妨げられることによる睡眠の質の低下や、心身に加わるストレスが深く関わっていることが考えられます。

Kyoung-BokMin博士は、「不妊には、環境汚染など普段生活する上での予期せぬ問題が悪影響を与えている可能性が高く、近年、公衆衛生上の大きな問題になっている」と述べるとともに、「他の動物種では、高い騒音レベルの環境に暴露されることで繁殖力に悪い影響を及ぼすことが示されていたが、この研究では、初めてヒトの不妊症と環境騒音との関連性(危険性)を示したものである」としています。

夜眠っている時に、「ピーポーピーポー」と救急車がサイレンの音を響かせながら家の前を通ったりすると、ついつい目を覚ましてしまったという経験がある方もいらっしゃるかと思います。
そういった眠りを妨げる騒音への暴露こそが、不妊の原因となっているかもしれません。

静かでリラックス出来る環境が、健康にも妊娠にも良い働きをすることは間違いなさそうです。

川口 優太郎先生

川口 優太郎先生

埼玉医科大学を卒業後、総合病院勤務を経た後に、国際基督教大学(ICU)大学院博士前期課程へと進学。アーツ・サイエンス研究科にて生命科学を専攻。大学院修了後は、加藤レディスクリニック(新宿区)に勤務。同クリニックの系列病院となった中国上海永遠幸婦科医院生殖医学センターへ出向し、病院の立ち上げに携わるとともに、現地スタッフの育成・指導や培養室の運営などを行う。その後、2018年に東京都渋谷区に新規開院となった桜十字渋谷バースクリニックに培養室の立ち上げスタッフとして赴任。培養室主任を務め、指導要領の作製や培養室の運営管理とともに、生殖医療関連のセミナーにて講演を行うなど、精力的に活動。2020年に、総合的な妊活サポート行うリプロダクティブサポートファーム東京を設立し、代表に就任。

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