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不妊症の原因にもなる肥満や過体重。理由や出産への影響について | Marbera
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2021/07/28
不妊に悩む女性の多くが、妊娠のためにできる限りのことをしようと様々な努力をしています。食生活の改善や運動、サプリメントや鍼灸などを試したことがあるという人も多いのではないでしょうか。
そして、妊娠を希望している多くの女性がご存知のように、女性の年齢は妊娠に大きく影響を与えます。不妊に悩む女性の割合は25歳~29歳では8.9%、30~34歳では14.6%、35~39歳21.9%、40~44歳では28.9%となっていて、年齢とともに不妊の割合が高くなることがわかっています。
加齢による妊娠力の低下そのものを止めることはできませんが、妊娠しやすい体づくりのためにできることを考えてみましょう。
肥満や過体重が不妊に与える影響
不妊治療を受けている人の中には、病院で体重管理について指導を受けたことがあるという人がいるかもしれません。肥満が直接不妊の原因になるというわけではありませんが、肥満が妊娠しにくい状況を作り出すということは実際のデータでもわかっています。
一般的には20歳前後を目安に基礎代謝が落ちていく傾向があるため、それまでと同じ運動量や食生活のままでは、年々体重が増加していく可能性が高くなります。つまり加齢だけでなく、それに伴う体重の変化が妊娠に影響を与える可能性もあるということです。
不妊における過体重の定義や、不妊への影響を詳しく説明します。
BMIで見る過体重と妊娠の関係
まず、肥満や過体重という状態をどのように判断するのか、ということから説明します。
適正な体重は身長によっても変わるため、BMIという指数を使って判断します。BMIは以下の計算式で算出します。
- BMI = 体重kg ÷ (身長m)2
日本肥満学会の基準では、成人の場合BMI25以上を肥満と定義しています。
アジア人女性の肥満と妊娠の関係を調べた論文の『Female adiposity and time-to-pregnancy: a multiethnic prospective cohort 』(Human Reproduction, Vol.33, No.11pp.2141–2149, 2018 L. Loy et al.)によると、最も妊娠しやすいBMIは18.5~22.9であるという結果が出ています。
さらに、BMIが30を超えるとそれ以下の場合に比べ妊娠までに時間がかかるということがわかっています。
BMIが低すぎても妊娠しにくくなる
ここで注意しなければならないのは、痩せていれば良いというわけではないということです。すでにお伝えした通り、BMIが18.5~22.9の女性は妊娠までの期間が最も短いという結果でした。肥満に該当する人だけではなく、BMIが18.5以下の場合も妊娠までの期間が長くなる傾向があるため、不妊の状態改善のためにはBMIが18.5を下回らないようにするということも重要です。
肥満が不妊に影響を与える理由
肥満や過体重によって妊娠しにくくなるということはここまでの説明の通りですが、過体重が直接的に不妊の原因になるというわけではありません。ここでは、肥満が不妊にどう影響するのかということをもう少し詳しく説明します。
そもそも、不妊の原因というのは必ずしも女性にあるとは限りません。実際、男女双方に原因がある場合も含めて考えると、男性側にも不妊の原因があるというケースは全体の不妊の約半数程度だということがわかっています。
そして、女性側の不妊の原因としては、下記のような要素があげられます。
- 排卵因子
- 卵管因子
- 子宮因子
- 子宮頚管因子
- 原因不明
この中で、肥満が大きく影響を与えるのが排卵因子による不妊です。排卵因子による不妊はこの中で約10%程度の割合を占めることになります。排卵障害では月経周期が不規則になる場合や、周期が長すぎたり短すぎたりするケースが多く見られます。しかし、中には生理周期は安定しているものの、調べてみると排卵がきちんと行われていなかったり、多嚢胞性卵巣症候群といって一度にたくさんの卵子が排卵されていたりということもあります。
排卵にはホルモンバランスが大きく影響するため、肥満の場合排卵自体が正常に行われないことが多い傾向があり、これが不妊に影響すると考えられています。
肥満の解消により排卵が安定する
排卵にはホルモンバランスが関係するため、そのときどきの健康状態や精神状態によって排卵の状況は変化します。たとえば肥満に該当しない人でも、強いストレスを感じると一時的に無排卵になったり、月経周期が乱れたりということはよくあることです。
そのため肥満によって排卵が乱れても、肥満が解消されることで排卵が安定して妊娠しやすい体に変化することは十分にあり得ることです。
過度なダイエットには注意が必要
肥満の改善によって排卵の状態も改善されることがあるのは事実ですが、そのために過度なダイエットをすれば良いというわけではありません。短期間で大幅な減量をしようとすれば食生活や健康状態に大きな変化が起こり、かえって体にストレスがかかってしまうことがあります。
体に悪影響を与えずに適正体重を目指すには、1ヶ月に現在の体重の5%以内を落とすことを目標にしましょう。また、減量方法も過度な食事制限のみに頼るのではなく、間食を減らしつつ運動量を増やすなど、生活全体を見直しながら無理なく体重を減らしていくのが理想です。
肥満や過体重は妊娠後の健康状態にも影響を与える
妊娠を目指している女性に理解しておいてほしいこととして、肥満と不妊の関係以外にも、肥満と出産の関係が挙げられます。
不妊に悩む女性や不妊治療中の女性にとって、妊娠するということは何より大きな目標のひとつでしょう。しかし、妊娠は出産までの過程のひとつに過ぎず、母子ともにできるだけ安全な状況で出産に至るという大きなゴールがあることを忘れないでください。
肥満は少なからず不妊に影響を与えますが、仮に肥満の状態で無事に妊娠できたとしても、妊娠生活や出産において大きなリスクになります。
実際、BMIが30以上の女性はBMI30未満の女性に比べて妊娠高血圧合併・妊娠高血圧腎症合併、妊娠糖尿病などの発症が多いことがわかっていて、初産の場合には帝王切開の頻度も高くなる傾向があります。流産率を見ても肥満の女性のほうが割合が高く、出生率は肥満の女性のほうが低いというデータがあります。
つまり、妊娠だけでなく出産まで総合的に考えた場合、肥満は大きなリスクのひとつだということです。
上手にストレスコントロールしながら体重管理をしよう
不妊という状態は、妊娠を望む人にとってそれだけで大きなストレスになります。肥満気味だなと思っていても、強いストレスの中では食生活の改善まで気が回らなくなってしまうことも少なくありません。また、運動量を増やそうと思っても、仕事や家庭と不妊治療などに時間やお金がかかるせいでなかなか思うように運動の機会を作ることができないという人もいるはずです。
自宅でのストレッチや筋トレなど、気が向いたときに少しずつできることを考え、負担になりすぎないように無理なく生活に取り入れてみてください。最初は気が重たくても、運動自体がストレス解消につながったり、間食の頻度を減らして自分へのご褒美にしたりと、ポジティブに生活を変えていけると健康面でもメンタル面でも良い変化が生まれます。
特に不妊治療では原因が男女どちらにあっても、女性側に大きな負担がかかりがちです。パートナーと一緒に運動の機会を作るなど、妊娠のために一緒にできることのひとつとして、協力しながら生活習慣の改善を目指すというのも良いのではないでしょうか。
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