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最近話題の睡眠の質。不妊にも関係している!?

2023/04/15

川口 優太郎先生

川口 優太郎先生

前回まで、ストレスが妊娠に及ぼす影響について、食生活などの生活習慣が深く関係していること、そして、正しい知識の下に改善を図っていくことで、健康な身体を作り妊娠率を向上させることができるとお伝えしました。

全国健康保険協会(協会けんぽ)のHPでも、生活習慣の改善方法として、「適度な運動を心がける」や、「禁煙は今すぐに!」「主菜は肉よりお魚を」などいくつかの改善案が示されています。
中でもストレスに直結するものとして挙げられているのが『睡眠の改善』についてです。

今回は、睡眠の質と不妊症の関係性について、最新の研究論文をいくつかご紹介しながらお話ししていきたいと思います。

睡眠の質が健康に与える影響

実は、過去半世紀の間に現代人の平均睡眠時間は1時間以上も短くなっていると言われています。
そして睡眠不足が生活習慣病のリスクを高めることが指摘されています。

当たり前ですが、睡眠時間が短くなると覚醒している時間が長くなるので、覚醒状態の時に活発になる交感神経が優位になります。

交感神経が優位になると緊張状態が作り出され、血圧が上昇するため、高血圧のリスクが高くなります。
また覚醒状態は食欲をコントロールする機構にも作用して、満腹中枢を鈍らせることが知られているため、肥満や糖尿病のリスクも増大します。

睡眠の質と不妊に関する研究

生殖医療の分野においても、“睡眠の質”が“卵子の質”に深く関係していることや、睡眠を著しく妨げる騒音環境が不妊を招く可能性があることが示唆されています。

2017年に、アメリカの生殖医学学会誌Fertility and Sterilityに発表された研究によると、「睡眠の質が低下すると卵子の質も低下する」という可能性が報告されています。

睡眠の質と卵子の質

この研究では、体外受精を行っている患者さんに睡眠の質についてのアンケート調査を行い、A群(良好な睡眠が取れている)、B群(やや睡眠不足である)、C群(重度の睡眠障害がある)の3つのグループに分けて、それぞれの患者さんの体外受精成績を比較検討しました。
すると、睡眠の質が悪いグループほど卵子の受精率が有意に低く、胚の発生率も有意に低かったと報告しています。

また、睡眠の質の段階が良くなるにつれて卵子の受精率や胚の発生率が上昇し、睡眠の質と治療成績が比例関係であったことなどから、睡眠の質が卵子の質に何らかの影響を与えている可能性が高いと考察しています。

夜間の騒音と不妊

睡眠の質と言っても、ただ単に睡眠時間が長ければ良いということでは無いようです。

環境汚染分野などの研究をまとめた国際学術誌Environmental Pollutionに発表されている論文によると、夜間の騒音環境への長期的な暴露が、不妊症と密接に関係していると指摘しています。

そもそも『騒音』は、世界保健機構(WHO)でも環境汚染の一つと認定されており、先行研究から、循環器系疾患や精神疾患などの健康問題と深く関連していることが指摘されています。
また、産婦人科分野に焦点を当てると、長期間の騒音環境への暴露によって、流産や早産が引き起こされる可能性も数多く報告されています。(※International Journal of Environmental Research and Public Health, 2014 Aug; 11(8): 7931–7952. Gordana Ristovska博士らの研究ほか) 

騒音が不妊症の原因に!?

韓国のソウル大学で予防医学を研究しているKyoung-BokMin博士らの研究チームは、55dBという比較的低レベルの騒音でも、長い期間に渡って暴露されると、不妊症を発症する原因になると指摘しています。

55dBとは、WHOが定める夜間騒音レベルで、真夜中に家の前を車が「サーッ!」と走り抜けていく音がだいたい55dB程度と考えてください。

Kyoung-BokMin博士は、韓国の国民健康保険データベースから対象者をランダムに抽出し、National Noise Information Systemが報告している騒音レベルに関するデータを下に、騒音レベルと騒音への暴露期間の調査・分析を行いました。

すると、長期間に渡って55dB以上の騒音に曝された人ほど、不妊と診断される可能性が有意に高く、夜間に騒音にさらされていた人ほどその傾向が大きかったとしています。

リラックスできる睡眠環境が大切

夜間に騒音にさらされることが不妊の原因となる可能性については、先述にある通り、眠りが妨げられることによる睡眠の質の低下や、心身に加わるストレスが深く関わっていることが考えられます。

Kyoung-BokMin博士は、「不妊には、環境汚染など普段生活する上での予期せぬ問題が悪影響を与えている可能性が高く、近年、公衆衛生上の大きな問題になっている」と述べるとともに、「他の動物種では、高い騒音レベルの環境に暴露されることで繁殖力に悪い影響を及ぼすことが示されていたが、この研究では、初めてヒトの不妊症と環境騒音との関連性(危険性)を示したものである」としています。

夜眠っている時に、「ピーポーピーポー」と救急車がサイレンの音を響かせながら家の前を通ったりすると、ついつい目を覚ましてしまったという経験がある方もいらっしゃるかと思います。
そういった眠りを妨げる騒音への暴露こそが、不妊の原因となっているかもしれません。

静かでリラックス出来る環境が、健康にも妊娠にも良い働きをすることは間違いなさそうです。

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不妊症は女性の問題? 不妊症検査を夫婦で受けるべき理由

2023/04/01

Marbera運営事務局

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「もしかして私、不妊症かも?」と悩みや不安を抱えている方、もしあなたが赤ちゃんを望んでいて、避妊をせずに普通の夫婦生活を行っているにも関わらず、1年以上が経過していても挙児を得られていないのならば、あなたは不妊症かもしれません。

この“1年以上が経過”という期間には、具体的な理由があります。

日本産科婦人科学会の報告によると、一般的に避妊をせずに普通の夫婦生活を送った場合、1年以内の期間で全体の約80%の夫婦が妊娠に至り、2年以内の期間では約90%が妊娠に至ると言われているためです。

しかしながら近年、女性の社会進出や活躍推進が著しく進む一方で、晩婚化などの社会的な背景などもあって、この不妊症に悩む患者さまが年々増加しています。

2017年に報告された日本産科婦人科学会による統計では、6組に1組のカップルが不妊症に悩んでいると言われており、患者数はおよそ55万人以上と推計されています。

不妊症とは

一言に“不妊症”といっても、その原因はさまざまです。
ひとむかし前では、「子どもができない」と言うと「女性の問題だ!」という風潮がありました。
日本では今なお、そうした考え方が根強く残っています。

私のクリニックに来院されている患者さまの中にも、そういった考え方の旦那さまが少なくはないのですが、実のところそうではありません。

不妊症の原因は大きく、

  1. 女性側の要因
  2. 男性側の要因
  3. 夫婦両方の要因

に分けることが出来ます。

女性側の要因の主なものとしては、卵巣(卵巣機能障害など)、卵管(卵管狭窄、卵管癒着など)、内分泌系(ホルモンの異常、月経障害など)、子宮(子宮筋腫、子宮内膜症など)が挙げられます。

反対に男性側の要因の主なものとしては、造精機能(無精子症、乏精子症など)、精巣(精路障害など)、内分泌系(ホルモンの異常など)、性交障害(勃起障害〈ED〉、射精障害など)が挙げられます。

不妊症の原因としてそれぞれが占める割合は、女性側だけに原因がある場合が約4割強、男性側だけに原因がある場合が約3割、そして、そのほかが夫婦両方に原因がある場合と言われています。

つまり男性側ならびに夫婦両方に原因がある場合を合算すると、不妊を主訴とする夫婦の約半数は男性側に原因がある可能性が高く、不妊症は「女性の問題だ!」で済む話ではないです。

正確に原因を把握することが重要

だからこそ、不妊症の検査は夫婦で受けることが非常に重要です。
不妊症の検査は、赤ちゃんを授かるためのファーストステップになります。

何が障害物となって赤ちゃんを授かることが出来なかったのか、血液検査、超音波検査、精液検査などを行って調べていきます。

中には検査を受けてもこれといった原因を特定することが出来ない場合があります。
この場合は、原因不明不妊(機能性不妊)と定義されます。

(※原因不明不妊の場合は、精子・卵子を人の手で受精させる体外受精治療を行うことで、はじめてその原因が判明することがあります。)

不妊治療の方法

不妊に対する治療の方法としては、それぞれの原因に沿って進められますが、一般的にはタイミング療法からスタートして徐々に高度な治療方法へ切り替えていく場合がほとんどです。

一方で、例えば卵管の癒着や狭窄がある場合などには、先にそれらの不妊要因を取り除いてから治療を進めていくこともあります。

赤ちゃんを望んでいるにも関わらず、なかなか妊娠しないという場合には、なるべく早い段階で専門の機関を受診することが大切です。

身体的要因以外の不妊症

近年増えている不妊症の原因の一つに、夫婦間のセックスレスがあります。

セックスレスは、1カ月以上の期間、夫婦間で性交渉がない状態と定義されています。
日本産科婦人科学会の調べによると、近年では年齢にかかわらずセックスレスの夫婦が増加傾向にあると報告されています。

セックスレスになってしまうと、当然、自然に妊娠することは困難です。
女性側、男性側ともに身体には何も問題が無くても、精神的な原因から不妊症を招いていることになります。
この場合には、夫婦両方に精神的なケアを行っていく必要があります。

不妊症は決して女性だけの問題ではありません。赤ちゃんを授かるためには、さまざまな問題に夫婦で向き合うことが必要なのです。

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なぜ妊娠しないの? 男女の不妊原因を知ろう!

2023/03/15

Marbera運営事務局

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ふたりでこんなに頑張っているのに、なぜ妊娠しないの?
……そう思ってしまいますよね。

教科書的になってしまいますが、不妊の状態によって呼び方が違います。
一度も妊娠したことがない状態を「原発性不妊」、一度は妊娠したことがある状態を「続発性不妊」と言います。
病院を受診すると、カルテに記入されることがありますので、驚かないでくださいね。

不妊の原因に男女差はあるのか?

不妊の原因はいろいろです。
女性側、男性側と性別の違いにも原因があります。

WHOの発表では、女性の原因が約41%、男性の原因が約24%、両方に原因のある場合が約24%、原因不明のものは約11%です。
不妊は女性の問題と思われがちですが、男女比は半々ということになります。

女性側の原因

1)排卵がうまくいかない場合

排卵がうまくいかない場合は、無月経や不規則な排卵、基礎体温を測定すると高温期が短い状態になることが多いです。
この場合、基礎体温を測定することで、排卵があるかどうかがわかります。
最低でも3か月は測定してから、病院受診をお勧めします。

基礎体温は排卵の有無だけでなく、月経周期、高温期の長さなどから原因を予測することができます。
排卵がうまくいかない場合、排卵を誘発する飲み薬や、注射を使用して治療します。

2)卵管に問題がある場合

卵管はとても大切で、精子、卵子、胚(成長した受精卵の初期の状態)が移動する場所です。
トンネルのようになっていて狭いところもあります。

卵管に問題がある場合は、トンネルがさらに狭くなったりつまったりすることで、精子や卵子が出会えなくなること、また胚が移動しづらくなっていることが原因と考えられます。

また卵管は、感染症や子宮内膜症などで腹腔内と癒着し、卵管の動きが制限されることがあります。
そうなると卵巣から排卵された卵子を卵管内に取り込めず、不妊の原因となります。

卵管のつまりを解除するために、FTカテーテルを使用した手術や、卵管周囲の癒着を剥離する腹腔鏡による手術で治療ができます。
それでも上手くいかない場合は、体外受精での治療が可能です。

3)子宮に問題がある場合

子宮は胚(受精卵)が着床し、胎児が発育する場所です。
子宮内にポリープや子宮筋腫があると、胚の着床を妨げてしまいます。

また流産手術を繰り返すことで子宮内腔が癒着を起こしたり、子宮内膜が薄くなったりすると着床しにくくなります。
治療としては、子宮鏡下でポリープや子宮筋腫を切除したり、子宮内の癒着を剥離します。

4)頸管粘液の異常

排卵が近くなると、子宮頸管は水曜透明な頸管粘液でいっぱいに満たされます。
これは、精子が子宮内に侵入しやすくなるためです。頸管粘液の状態が良くないと、精子は子宮内に進入できず、それが不妊の原因になります。

また、人間には細菌やウィルスなどの外的と闘い、自分を守るための「免疫」を持っています。
簡単に異物が進入しないようにするための大切な仕組みです。

中には「抗体」という免疫の力で、精子を攻撃してしまうことがあります。
抗精子抗体と言います。
この抗体を持つ女性の場合、子宮頸管や卵管内で抗精子抗体が分泌されると、精子の運動性が失われ、子宮内または卵管まで到達することができず、卵子と出会うことができなくなります。
そのために妊娠できないのです。

5)受精障害

受精とは、卵子の中に精子が進入し、融合して起こります。
卵子もしくは精子自体に問題があり、受精できない場合を受精障害といいます。

卵子側の要因として、卵子を覆っている透明帯が固いなどの異常や、卵子そのものの質の低下など、機能的な異常がある場合に受精障害が起こることがあります。
精子側の要因として、運動性の低下などの異常やDNA損傷など機能的に異常がある場合に、受精障害が起こることがあります。
ただし、受精障害は検査で分かるものではありません。

男性側の原因

冒頭に記載したように、男性側の原因は約48%とされています。
造精機能障害、精路通過障害、性機能障害などがその原因と言われています。
1つずつ説明していきます。

1)造精機能障害

精子を製造する能力に問題がある場合をいい、男性不妊の約80%とされています。
精子の数が少ない、または無い、あるいは数はあっても精子の運動性が悪いなどで妊娠しづらくなります。

中でも精索静脈瘤は、精巣周囲の血管がうっ滞することで精巣内の温度が上昇し、精子の数や運動性が低下することが分かっています。
一般男性の15%、男性不妊症の40%、二人目不妊では78%に認められると言われています。

手術をすることによって精巣の機能が改善し、精子の数や運動性が上昇するという報告も多数見られています。その他、染色体や遺伝子の異常が約10%、原因不明は約42%あります。

2)精路通過障害

生み出された精子が、ペニス(陰茎)の先までの通り道において、何らかの原因で運ばれない場合を言います。
この場合、射精はできています。
例えば過去にお腹の手術の既往があったり、精巣上体炎などの炎症があったりして精管がつまっていることもあります。

3)性機能障害

勃起障害(ED)や膣内射精障害など、性行為で射精できないことをいいます。
刺激の強すぎるセルフプレジャーでできない場合もあります。

しかし、一般的には仕事のストレスに加え、妊活をはじめたことによるストレスや、性交の日を指定されるなどの精神的なプレッシャー等が原因で、射精できなくなることがあります。
中には、糖尿病などの病気が原因のこともありますので、肥満の方はそちらも気をつけなければいけません。

性別にかかわらない原因

1)加齢によるもの

男女とも、加齢により妊娠する力(妊孕性)が低下することが分かっています。
男性は35歳を過ぎると精子の質の低下やDNAの損傷を起こすと言われています。
女性は40歳を過ぎると急速に減少します。

まとめ

不妊の原因はひとつだけではなく、複数が絡み合って起きていることがあります。
検査でわかる原因ならば、しっかり説明を受けることで自分の身体の状態がわかります。

それを理解したうえで治療をどうするか、どこまで受けるかなどをご夫婦で考えることができます。
その一方ではっきりした原因もなく、治療を続けていてもお子さんが授からないこともあるという現実も理解しておきましょう。

不妊症看護認定看護師・助産師 阿部監修

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不妊治療中にストレスを感じやすい場面とは?

2023/03/07

Marbera運営事務局

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ストレスとは、ひと言で説明すると「外部から刺激を受けたときに生じる緊張状態のこと」をいいます。
不妊治療中はとかくストレスを受けやすく、その影響で妊娠率まで低下すると思われがちです。
もちろん「その通り!」という部分もあり、ストレスは悪というイメージが強いと思います。

不妊治療中にストレスを感じるのはどんな時?

人によって物事の見方や解釈が異なるように、ストレスの感じ方も人それぞれです。
ストレスとうまく付き合っていくための方法もいろいろあると思います。

ただ、どのような場合にストレスを感じやすいのかという知識を事前に備えていれば、案外穏やかに過ごせるかもしれません。
これまで不妊治療を受けた方が、どんなところにストレスを感じていたのか、具体的に見ていきましょう。  

病院での診察時

  • 「この日に来てください」と、月経周期や卵胞の状態で来院日が決まる
  • 排卵誘発剤を内服したら、頭痛がしてきた。辛くて仕事ができない
  • タイミング法の時は月に2回程度の診察だけど、人工授精になったら4回に増えた
  • 排卵を促すという注射が痛い
  • 黄体ホルモン補充と言われ、2週間も飲み薬を続けるのが面倒
  • 人工授精の日に夫に精液採取をお願いするのがイヤ
  • 体外受精にステップアップしようと思ったら説明会に夫婦で参加と言われた
  • 高度生殖医療は病院に通う回数が多すぎる
  • 自己注射するように言われた。怖い
  • 婦人科の診察は下着を脱いで受けるので、下着に気を遣う
  • 毎日お風呂に入っていても、診察日は朝からシャワーを浴びてしまう
  • 前回の先生と違う人。緊張しちゃう
  • コロナでひとり通院になった。心細い

これから不妊治療を受けられる方の中には「こんな風になっちゃうの?」と不安を感じた方がいらっしゃるかもしれません。
注射が痛い、薬の副作用がツライといった身体的なストレスもありますし、「イヤ」と思う気持ち、いわゆる心理的ストレスもあります。

病院でどのような検査や治療をするのかを知っていれば、「こんな事をするのかな?」と考え、予測することができます。
何をされるかわからずドキドキしていた方も、次の展開が予測できれば心身共に準備ができ、恐怖感も軽減されると思います。

家族や友人との出来事

  • 夫の母や親戚に「まだ妊娠しないの?」と聞かれる
  • 親戚の集まりで、子供連れがいると悲しい気持ちになる
  • 友人同士の集まりは、子どもの話中心で仲間に入れない
  • 友人に「なかなか妊娠しない」と言うと、急によそよそしい雰囲気になる
  • 年賀状には、子どもの写真ばかり。見たくない
  • 夫に毎回毎回、タイミングの時期を説明するのがイヤ
  • いつも性行為は排卵の頃だけ。もっと仲良くしたいのに
  • 治療のこと、一緒に考えてほしいのに、夫は「好きなようにしていいよ」と言う
  • ふたり目の子どもがほしいのに、「ひとりいるからいいよ」と誰も話を聴いてくれない

家族や友人との関わりでストレスを感じる場面では、アイメッセージ(「私はこう思う」という表現方法)で伝えると、良好な関係性を維持しやすくなります。

例えば友人に「子どもはまだ作らないの?」と言われて悲しい気持ちになった時、「私たち今、頑張っているんだよ。応援してね」と伝えてみてはいかがでしょう?
きっと、相手も応援したい気持ちになるのではないでしょうか。

仕事に関すること

  • 不妊治療していることを職場の人には知られたくない
  • 休暇の申請も突然になるので、他の用事では休みづらい
  • 責任のある仕事に就いているのに、通院のことを考えるとどこまで頑張れるか不安
  • この状態がいつまで続くんだろう
  • 不妊治療のことを話したら「病気じゃないんでしょ」と理解されなかった
  • 子供のいる人は急な休みも許されるのに、不妊治療のことは話しにくい雰囲気
  • 仕事を辞めて治療に専念したいけど、治療費が高いので辞められない
  • 体外受精にステップアップしたら、休みだけでなく貯金もどんどん減ってしまう

厚生労働省は2022年4月から不妊治療の保険適用開始とともに、仕事と治療の両立しやすい環境整備支援を始めています。

例えば「不妊治療連絡カード」
自分からは言い出しにくい不妊治療について、企業の人事労務担当者に的確に伝達するために厚生労働省において作成し、活用を推進しているカードです。

また厚生労働省では、仕事と治療の両立を目指すあなたのために「不妊治療と仕事との両立サポートハンドブック」を作成しています。
職場で上司や同僚に配慮してほしいことや困ったときに利用できる相談窓口の案内などがまとめられている冊子です。
こういったものに目を通すだけでも、不安な気持ち軽減できるかもしれません。

まとめ

「治療費が高い」「貯金がどんどん減ってしまう」という経済的なストレスもあれば、「友人の言葉に傷ついた」「仕事が休みづらい」といった社会的なストレスもありました。

これらは複数の要因が絡み合ってストレスとなるため、あまりに複雑化してくると、気分の落ち込みや睡眠不足、過食や拒食になってしまうことがあります。
そのままにしておくと、心だけではなく体にも悪影響です。

いつの間にか人に頼ることは「大人のすることではない」と思い込んでいませんか?

頼っていいのです。
教えてもらっていいのです。

そうやって少しずつストレスを減らしていくことで、辛く思える不妊治療も笑顔で受けられるようになります。
泣いていても「子どもがいない」という現実は変わらないのです。
それなら笑顔で毎日を過ごしながら、明るい未来を夢見ませんか?

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「日本は世界一の不妊治療大国で世界一成功率が低い」のカラクリ

2023/03/01

川口 優太郎先生

川口 優太郎先生

先日とあるニュースサイトでこんな見出しの記事が掲載されていたのをご存知でしょうか?

『日本は世界一の不妊治療大国で、世界一成功率が低い』

記事の内容は、日本の体外受精治療周期数はアメリカと比較して約1.5倍、ドイツ、フランス、韓国などとの比較では約3倍にもなり、世界で一番治療周期数が多いこと。
その一方で、治療による出産率はアメリカの1/3程度で、世界で最も低い数値であるとのことでした。

この記事だけを読むと、「ふ~ん。日本の不妊治療って確率が低いんだ。じゃぁアメリカでも行くか‥‥」となってしまいそうですよね?
確かに、数字の上だけではその通りかもしれませんが、本当にこのデータをそのまま鵜呑みにしても良いのでしょうか?

今回は、このデータのカラクリを解き明かしながら『日本は世界一の不妊治療大国で、世界一成功率が低い』の真実をお伝えしていきたいと思います。

日本が不妊治療大国と言われる理由:年齢

日本が不妊治療大国で成功率が低いという理由の1つに『年齢』があります。

先ほどの記事では触れられていませんが、実は世界的に見ると、日本で不妊治療を受けられている患者様の年齢層は他国と比較すると約1~4歳程度高齢です。

近年、日本では女性の社会進出が活発になっていることで、妊活あるいは不妊治療を開始する時の年齢が、ここ数年で飛躍的に引き上げられているという社会的な背景があります。
妊活や不妊治療を始めたのが40代からという方も非常に多く、すでに妊娠・出産適齢期を過ぎてしまっているというケースも少なくありません。

不妊治療において年齢は重要な要素

不妊治療を行った場合、一度の治療周期で赤ちゃんを授かる確率は、20代から30代前半であれば約20~30%半ば、30代後半は15~20%程度です。
そして40代では5~10%、43歳を超えたら1%未満にまで低下します。

つまり、日本の不妊治療の成功率が低い理由の一つは、他国と比較して治療を受けている患者様の年齢層が高いことに関係しているのです。
実際、年齢というバイアスをなくして(35歳以下のみ)検証した場合、日本の不妊治療成功率は他国と比較しても相違はほとんどありません。

また高齢の患者様(43歳以上のみ)で、ドナー卵子などの症例を排除して検証した場合には、不妊治療の成功率(移植後の胎嚢確認まで)はむしろ他国よりもやや高めなのです。

中国でも高年齢の不妊治療が増えている

不妊治療患者の高年齢化は中国(大陸中国)でも同様に見られますが、これはいわゆる『一人っ子政策』が関係していると言われています。

1970年代に人口制限を目的としてスタートした一人っ子政策は、2015年に1組の夫婦につき子ども2人までに緩和されました。
これにより一人っ子政策によって兄弟・姉妹をあきらめていたご夫婦が、40歳を過ぎて子どもが欲しいと不妊治療に挑戦するケースが増えているためだと考えられています。

日本が不妊治療大国と言われる理由:生殖に関する知識不足

関連して、日本が不妊治療大国だと言われる理由がもう1つあります。
それは日本人が他国と比較して、妊娠など生殖に関する知識が顕著に低いという点です。

2013年にヨーロッパの生殖医療専門ジャーナルHuman Reproductionに掲載された研究によると、先進国の中でも日本人はとりわけ生殖に関する知識が乏しく、途上国と比較しても知識量が極めて少ないという結果が示されています。

生殖に関する知識レベルチェック

例えば、皆さんはこんな質問に正しく答えられるでしょうか?

  • Q.1 いちばん妊娠しやすいタイミングは排卵日である。[〇 or ×]
  • Q.2 良好な精子を取るためには禁欲期間は出来るだけ長い方が良い。[ 〇 or ×]
  • Q.3 基礎体温は排卵日を知るために最も適したツールである。[ 〇 or ×]
  • Q.4 不妊検査で何も悪い所見が見つからなければ、自然妊娠は可能である。[ 〇 or ×]

皆さん分かりましたか?
実はこの答え……すべて[×]なのです。

解説は最後にまとめるとして、実際のところ「全問正解!こんなの簡単だよ!」という方、「えっ!ここ違うの?」という方、半々くらいなのではないかなぁと思います。
研究によると、このような質問にすべて正しく答えられた日本人は、約3割程度しかいなかったとのことです。

このような生殖に関しての正しい教育が行き届いていないことや、ネットなどの間違った情報を信じてしまっていること、さらには、そもそも生殖に対する“無関心”が結果的に治療開始年齢の高齢化を招き、不妊治療を受ける患者様を増加させている要因であると考えます。

先を見据えたライフプランニングの重要性

女性には妊娠・出産適齢期というものが存在します。
簡単に言えば、母体・児ともに健康的に妊娠から出産までを迎えることが出来る年齢の事です。

ファミリープランニングを専門に行っている団体が、2015年に10代後半~20代の女性を対象として行ったアンケート調査によると、妊娠・出産適齢期という言葉自体を知らない・聞いたことが無い、あるいは自分に当てはめて考えたことがないという女性が合わせて70%近いというデータが示されています。

生殖に対する無関心からかはわかりませんが、「妊娠なんていつでも出来るから今は仕事が大事!」と誤った認識の下でキャリアを優先する女性が増えている日本の現状を鑑みると、日本が世界一の不妊治療大国で世界一成功率が低いという不名誉な称号はまだまだ付きまとうのかもしれません。

確かに数字の上では記事の通りなのですが、女性(特に若い方々)がほんの少しだけ将来に意識を向け、いつまでに結婚していつまでに子どもを産むのかといったライフプランニングをしっかり行う女性こそが“意識高い系女子”と認識されるようになれば、この現状は大きく変わっていくのではないでしょうか?

【問題の解答&解説】

Q.1 いちばん妊娠しやすいタイミングは排卵日である。答え;×
A.一番妊娠しやすいタイミングは排卵日の2日前であることが先行研究より示されています。

Q.2 良好な精子を取るためには禁欲期間が長い方が良い。 答え;×
A.精液検査を行う際には、2~3日間の禁欲期間の後に行うことが推奨されています。禁欲期間が長いと、精子の運動率の低下や染色体(遺伝子)に損傷を受けた精子が増えることが示されています。

Q.3 基礎体温は排卵日を知るために最も適したツールである。 答え;×
A.体調や心の状態によっても体温が変化することがあります。また、毎日同じ時間に計測するという煩雑さから、最も適したツールとは言い難いです。

Q.4 不妊検査で何も悪い所見が見つからなければ、自然妊娠は可能である。 答え;×
A.遺伝子的な要因や、卵子あるいは精子自体の受精障害、年齢による卵子の質の低下、その他子宮に何らかの問題があるなど、不妊検査だけではわからないことの方が数多くあります。

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まさに奇跡のメカニズム! 妊娠に至るまでの9つのステップ

2023/02/15

Marbera運営事務局

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あらためて妊娠について考える

そもそも妊娠とは、どのような現象を言うのでしょう?
広辞苑で調べてみたところ「女性が体内に受精卵または発育した胎児を身ごもっている状態。正常の妊娠維持期間、すなわち受精から分娩までの期間は、最終月経から数えて約280日。懐妊、懐胎」とありました。

言葉で端的に説明すれば、まさにそのとおりです。
しかし、その仕組みはとっても複雑です。

妊娠の9つのステップ

妊娠に必要なステップは9つあります。
このどれかひとつでも上手くいかないと、妊娠という現象は起きません。

  1. 1.膣内に射精する
  2. 2.精子が子宮内に入る
  3. 3.精子が子宮内から卵管に進む
  4. 4.卵子が育つ
  5. 5.排卵する
  6. 6.排卵された卵子を卵管采が取り込む
  7. 7.卵管膨大部で受精する
  8. 8.受精卵が成長しながら子宮内まで移動する
  9. 9.着床

この全てがクリアされないと妊娠には至らないのです。
まさに奇跡です。

1.膣内に射精する

射精とは、男性が性的刺激を受けた際に陰茎が勃起し、精巣で作られた精子が精管を通り尿道から放出される状態をいいます。
とても簡単なことのように思えますが、実は男性も女性に負けないほどデリケート。
何気ない女性の言葉で傷つき、射精できないこともあります。

2.精子が子宮内に入る

射精ができれば、精子は子宮内に入る……そう考えますよね。
しかし膣内環境によって、精子は子宮内に進入できないことがあります

まずは子宮頸管粘液が十分に分泌されているかどうかがポイントです。
子宮頸管粘液は一般におりものと呼ばれていて、月経周期の時期によってPH(水素イオン濃度指数)が変化します。

膣から子宮内はひとつに繋がっています。
通常、膣内は体内に細菌等の異物が侵入するのを防ぐため、酸性の状態にあります。
そのPHは4~5と言われています。

ところが排卵間近になると、膣内はPH7よりちょっと高めの弱アルカリ性になります。
膣内を精液と同じ弱アルカリ性にして、精子が生存しやすく、子宮内に侵入しやすい環境に整えているのです。

排卵の4~5日前から水っぽい粘調度の高いおりもの(頸管粘液)が分泌されます。
このおりものが精子を吸い込むように包み、子宮内に送り込みます。
排卵期の子宮は卵管の方に向かうような動きをし、膣内に射精された精子を、子宮内から卵管に向けて泳ぎやすいようにサポートしているのです。

排卵期の頸管粘液の分泌が不十分であったり、抗精子抗体を持っている方は、精子が子宮内に進入できない場合があります。
この場合は、子宮内に直接精子を送り込む治療や人工授精でないと、受精のチャンスを得ることができません。

3.精子が子宮内から卵管に進む

精子が卵管まで進むためには、どれくらいの距離を進んでいくのでしょう?
子宮頸管は約3cm、子宮内から卵管口までが約7cm、卵管の入り口から受精の場と言われる卵管采まで約7~12cmです。
個人差はありますが、約20cmの距離を、精子は泳ぎ切らないと卵子には出会えません。

では、精子の大きさはどれくらいなのでしょう?
精子の全長は約60μmです……イメージできますか?

1μmは0.001mmです。
頭髪の直径が約60μmといわれていますので、当然肉眼では見えません。
この精子が、約20cmの泳ぎの旅に出ていくのです。

1回の射精で放出される精子は、個人差があるものの約1億個と言われています。
そのうち子宮頸管に進めるのが約100億個、さらに卵管膨大部まで侵入できるのは約300個です。

20cmの距離を一心不乱に昇りつめ、出会えるかどうかわからない卵子に向かって戦う姿を想像してみてください。
それだけの力が精子には必要になってきます。

4.卵子が育つ

卵子は、卵巣内で発育します。
排卵までの大きさに成長するために、約6か月前から準備をはじめます。

そもそも、卵子は原始卵胞という状態で、卵巣内で眠っています。
既に生まれる前、お母さんのお腹の中にいる時に作られているのです。
その卵子の元の数は、減ることがあっても増えることはありません。

ちなみに、生まれたときから持っている卵子の元の数は個人差が大きく、たくさん持って生まれてくる方もいれば、少ない方もいます。
不妊治療に入る前に、この数の指標となる抗ミュラー管ホルモン(通称AMH)を検査することで、自分の体内にどれくらいの卵子の元が残っているのか確認できます。

5.排卵する

一生涯の間に排卵する卵子の数は、約520個と言われています。
そして毎月1個排卵するのに、実は数個から数10個の卵子の元がエントリーし、その1個以外は残念ながら吸収されてしまいます。

この排卵に重要な役割を果たしているのが、脳から分泌されるホルモンです。
卵胞を育てるためのFSH(卵胞刺激ホルモン)と、主席卵胞という女王様の様な卵胞が約20mmくらいまで育つと、排卵する卵子を成熟させるためにLH(黄体形成ホルモン)が分泌され、排卵へと導きます。

排卵は、卵巣内で大きく成長した1個の卵胞が破裂して、卵子が飛び出すことを言います。
毎月毎月、卵巣内で小さな破裂が起きますので、時には少量の出血を伴うこともあります。

6.排卵された卵子を卵管采が取り込む

卵管采は卵管の先端にあり、イソギンチャクのような形をしています。
卵巣を手のひらで覆い込む様子をイメージしていただくとわかり易いかもしれません。

この卵管采が上手く機能していないと、排卵した卵子が卵管内に取り込まれません。
これを、ピックアップ障害と呼びます。

残念ながら現代の医学では、ピックアップ障害を確認する簡単な検査はありません。
例えば子宮卵管造影検査で、卵管采に水腫が出来ているとか、卵管が腹腔に癒着しているなどの結果が出れば、予測できるかもしれません。
いずれにしても、排卵した卵子を卵管采が取り込むことができれば、精子と出会うチャンスを得ることができます。

7.卵管膨大部で受精する

受精とは、精子という1個の細胞と卵子という1個の細胞が合一することです。
その1個のために、精子も卵子も凄まじい争奪戦を繰りひろげます。

精子は1億という仲間を蹴落としながら子宮のさらに奥まで進み、約300個の仲間と排卵してくる卵子を待っています。
一方、アイドルのセンター争奪戦のようにして打ち勝った、たった1個の卵子が排卵によって卵管膨大部に取り込まれます。

ここで待ちぶせしていた精子が、卵子を目指し突き進みます。
そしてたどり着いた精子は、頭部から酵素を発し、卵子の中に侵入します。精子の侵入を受けた卵子は、他の精子が侵入しないよう、卵子の表面を変化させます。

精子の先端から十分な酵素が出なかったり、卵子の周囲を覆っている透明帯が固すぎたりすると、精子は卵子の中に進入できません。
これを受精障害と言います。
この場合は、体外受精、顕微授精の技術を用いて受精させます。

8.受精卵が成長しながら子宮内まで移動する

精子と卵子の出会いから約12~24時間後に核の融合が起こります。
この状態を受精したと判断します。

その後は細胞分裂を繰り返し、2日目には2~4細胞、3日目には6~8細胞、4日目には桑実胚、5~6日目には胚盤胞へと、どんどん細胞分裂を繰り返しながら卵管から子宮腔内に移動します。

9.着床する

胚盤胞は、内細胞塊、栄養膜、胞胚腔からできています。
内細胞塊は、赤ちゃんになる部分と言われています。
そして、胚盤胞まで発育した受精卵が、外を覆っている透明帯から孵化し、子宮内膜へと接着することを着床といいます。

この着床について、最近の研究では、子宮内膜もまた元気のある受精卵を選び、子宮内へと導いているような動きをすることが分かってきています。
種の保存のために生命力の強い精子と卵子が融合し、さらに元気な受精卵だけが選ばれて子宮腔内に着床できるのかもしれません。

まとめ

以上が、妊娠のしくみです。
どの工程も省略することができないし、どの工程も正常に機能しないと妊娠という奇跡は起きないのです。

  • 妊活・不妊治療

妻のメンタルのアップダウンに不安が募る・・。不妊における妻の気持ちってどんな気持ち?

2022/12/16

Marbera運営事務局

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妻のメンタルのアップダウンに戸惑い、ご自身も滅入ってしまうという男性も多く見受けられます。
妻の不妊における妊活中の心理状態を知っていると少しその不安は軽減できるかもしれません。

今回は、女性側の心理をしっかり学んでいただき、少しでもお互いがストレスが軽減された気持ちで妊活に取り組めるように通院できるように、精神的にも肉体的にも負担が多い妻をサポートしてくださいね。

 

 『結婚という形をとり、家庭を築き、やがて子どもが生まれて親になる。』

 

何となくそうなるだろうと誰もが思い描いているのではないでしょうか。
もちろん、その望みが強い方もいれば、そこまで意識していない方もいます。
自分の中にある漠然とした「子どもを持っている自分の人生」を「生殖ストーリー」と呼びます。これは、幼少期から成長する過程でなんらかの家族のイメージや理想像が備わっているという概念のことを指します。
これは中学校から高校へ進学するのと同じくらいに自然なものとして、無意識の中で思い描いていると言われています。

ですが、年月が過ぎ、結婚して、子どもを望んだとき、なかなか赤ちゃんが授からない状況になって初めて子どもに対する希望や気持ちを意識していきます。
この気持ちは、決して特別なものではなく、誰もがそう考えてしまうものです。さらに、そこからクライシス(危機)の心理をもたらします。教科書的な説明になってしまいますが、以下のように変化していきます。

  • 驚き(ショック):「まさか、私に原因があったんだ…」「5~6組に1組の確率って言われたけどその1組?」など、驚きと、やっぱり…というような落胆によるショックを感じている方もいます。
  • 否認:「これは、私のことじゃない」「たまたまできないだけで、きっともうすぐ…」と否定したい気持ちが働くことがあります。人間の心は、強い衝撃を受けると、自分で自分の気持ちを守ろうとします。当たり前の反応です。
  • 怒り:「なぜ、私たちだけこんな思いをするの?」家族や友人からの心無い言葉や、痛みを伴う検査や治療から、この気持ちが起きることもあります。時には医療者や、パートナーであるあなたに向かうこともあります。
  • 孤立:「誰にも言えない」「子どものいる友人とは会いたくない」など、自分たちだけと感じてしまいます。こんな気持ちを受けとめてもらえないと、「夫はわかってくれない」と絶望的に感じる方もいます。
  • 自責の念:「夫に申し訳ない…」という気持ちにいつも支配されてしまうことがあります。また「私と結婚しなければ子どもがいただろうな…」とか、「いつも子どもなんかうるさい!って言ってたから罰が当たったのかも」と、普段は信仰している宗教もないのに、そんな風に考えてしまうこともあります。
  • 悲嘆:悲嘆とは喪失にともなう感情です。なかなか人に言えない不妊という状態。しかも、必ず妊娠できるわけではなく、どうなるか先も見えず、とてもあいまいな状態です。そんな状態の中、月経が開始することは、生まれる予定だった赤ちゃんを亡くしたのと同じくらいの気持ちになります。しかし、目に見える存在ではないため、周囲の人には理解されにくく、悲しみの感情を分かち合ってもらうことが難しい状態です。
  • 解決:クライシスのゴールが解決です。医学的な解決は、妊娠・出産になりますが、誰もが必ずそうなるわけではありません。たとえ子どもが授からなかったとしても、その人なりの解決のプロセスがあります。


このプロセスは、誰もが同じ順番に全てを経験するわけではなく、その人によって違います。これが良くて、これが悪いということではなく、こんな気持ちになるのは当たり前のことで、こうなっていいんだ…ということを知ってほしいのです。

そしてその思いや感情は溜め込まず、吐き出していいということも知っていてほしいです。これは、男性が不妊の原因だった場合でも、両方に原因があった場合でも、同じプロセスをたどります。お互いを思い合うって大事ですね。

 

女性が治療を受ける際、どんな時にどんな気持ちになるかを知ろう!

何度も何度もプライベートゾーンを晒すことのストレス

そもそも、女性は通院すること自体が大きなストレスなのです。何といっても、診察される部位。最近の性教育では、プライベートゾーンと伝えておりますが、パンツの中の診察です。誰もがハードル高く感じます。

しかも、それが月経に合わせての通院になると、なおさらです。場合によっては月経中の診察もあります。

不妊検査や治療では、月経周期によって子宮内膜の様子、卵巣の様子が違うので、超音波検査での診察が必要になります。私たち医療従事者にとっては当たり前のことでも、受ける皆さまにとっては緊張しますし、時には痛みを伴う不快な検査でしかないですよね。
まずは、男性側にそこを理解してもらえるだけで、嬉しいです。


通院することによるストレス

現在のカップルは共働きがほとんどですので、働きながらの通院があたりまえのような状態です。
この通院においても、月経周期が絡んできます。毎月妊娠のために体がリセットするのが月経です。
その始まりは、「この日に絶対!」と確定できません。仕事をしている方は、おおよその予測をして予定を組まないと、通院ができないこともあり、そうなるとその周期の検査や治療ができない場合も出てきます。

急な休暇の申請や、その理由を会社の上司や同僚に伝えることもストレスになります。「今月はなんて言おうかな…」いつもそんな事ばかり考えてしまいます。帰宅後の妻の様子をみて、「何となく元気がない」とか「何か話したそうにしている」など、いつもと違う様子を感じたら、「今日、なんとなく元気がないけどどうしたの?」と尋ねてみてください。

そこで、話がもし始まったら、ちゃんと聞いてあげましょう。
答えを出そうとか、何か解決策を考える必要はありません。(もちろん、話す内容によっては解決策が必要な場合もありますが…)とにかく「聴く姿勢」が大事です。その日に起きた出来事、辛かった思い、悔しかったこと、どんなことでも話すだけで気持ちが楽になることがあります。

 

治療中の薬の副作用での体調不良や精神的なアップダウンも

また、治療中に使用する薬の副作用で体調が悪くなることもあります。たとえば排卵促進剤の服用は、あまり大きな副反応はないと言われていますが、個人差があり頭痛を感じる方もおります。
その他の薬でも、だるさやむくみ、精神的にイライラするなどの反応が起きることもあります。本人が気づいていない場合もありますので、「今日はちょっとイライラしてるね。」と教えてあげるのもいいかもしれません。

もちろん、治療に入る前に想定されることとして、二人の間で「こんな状態の時は、お互い伝え合う」というルールを作成するのが良いと思います。そして、可能な限り家事はふたりで分担しましょう。
最近の内閣府の調査によると、共働きの主婦が行っている家事の労働評価は、年間約250万円分の価値があるともいわれています。別の調査ではそれ以上の報告もあります。それほど大変な家事に対し、まだまだ家事=女性という考えが根強いのも現実です。女性は月経中だけでなく、月経前にも不調を感じることが多いです。
そんな時、仕事はなかなか休めなくても、家事はお休みしたいと思うもの。食事のあとの食器洗いやお洗濯をしてくれると、それだけで気持ちが楽になります。(男女共同参画白書(概要版)平成30年版

 

これだけは絶対に言ってはいけないNGワード、「好きにしていいよ」。

 

不妊検査や不妊治療は、女性が主体で検査や治療を受けることが多いです。とはいえ、やはり夫婦の問題なので、一人では決められないものです。
どんな小さな検査でも、あなたの妻が悩んでいたら、まずは話を聞きましょう。
もしかしたら、検査が痛いのではないかという不安から、検査を受けることを躊躇しているのかもしれません。
検査の結果が不妊の原因だとわかったときの気持ちを考えると怖いから受けたくないなど、いろんな思いがあります。

言葉に出すだけで、話を聴いてもらっただけで、安心して検査や治療を受ける決心ができるかもしれないのに、「好きにしていいよ。」のひと言で、「なんで私だけが…」という思いが強くなるものです。
「なんで私だけが痛い思いをするの。」「なんで私だけが恥ずかしい思いをするの。」「なんで私だけが仕事を休んで病院にいかなければならないの。」
そんな思いが強くなり、夫婦関係が悪くなったカップルも多くいらっしゃいます。
妻の気持ちは、夫にしっかり受け止めてもらえると、安心して検査・治療を受けることができ、ストレスが軽減します。
男性側の検査や治療は、女性と比較すると、回数でも内容でも苦痛の量は少ないです。
どうぞ、これまでのお話をしっかり理解し、治療も検査も一緒に受ける!くらいの気持ちで、愛する妻をサポートしてくださいね。

とはいえ、男性側も心を痛めてつらい思いをしている方もいらっしゃると思います。その時は、ぜひ無理をせずに私たち専門家を頼ってくださいね。夫婦カウンセリングもおこなっています。

監修:不妊症看護認定看護師 阿部

  • 妊活・不妊治療

不妊治療の病院での初診検査って何をするの?

2022/11/30

Marbera運営事務局

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初診の内容

不妊治療の初診内容の一例を紹介します。

  • 問診
  • ホルモン検査
  • 内診
  • 超音波検査

問診

問診では月経歴、妊娠歴、治療歴などを聞かれます。基礎体温をつけている方は念の為持参しましょう。妊娠や出産に関すること以外でも、生理不順や生理痛のことなども伝えるようにしましょう。

ホルモン検査

採血で行われるホルモン検査です。月経周期に合わせて異なる検査を行う場合があり、ある程度の卵巣機能がわかる検査です。

内診・超音波検査

子宮の大きさや形、子宮内膜の厚さや卵胞の状態がわかります。ここで骨盤内癒着などがわかることもあります。

病院によって検査内容は異なる

これはあくまでも初診内容の一例です。病院によって内容は異なり、基礎体温を必ず持参しなければならない場合や、パートナーと合わせて来院することを必須としている病院もあります。また、月経3~5日目、月経から1週間後、など初診の来院時期を指定する病院もあるため、検査を希望する病院に直接連絡し、事前に確認しておくのがベストです。

検査後の流れ

検査内容によっては投薬や追加の検査が必要になります。

たとえばホルモン検査でホルモンが不足していることがわかれば、投薬によってホルモンの状態を正常化していくことになります。また、超音波検査や内診で骨盤内癒着がわかれば卵管造影検査が必要になることもあります。

精液検査について

初診や治療初期段階では精液検査を必須としてる病院とそうでない病院があります。しかし、男女双方に原因がある場合を含めると、男性側にも不妊の原因があるケースは全体の不妊の約半数ほどと考えられています。

たとえば双方に大きな原因がない場合は、タイミング法や人工授精でも十分に妊娠が見込める場合もあります。しかし、男性側に不妊の原因がありタイミング法や人工授精では妊娠の可能性が極端に少ないにも関わらず、精液検査を行っていないため気が付かずにこれらの方法を繰り返して時間を無駄にしてしまうことも考えられます。不妊治療を検討しているのであれば、早期に精液検査も行っておくようにしましょう。

  • 妊活・不妊治療

不妊に影響する3つの鍵

2022/11/30

Marbera運営事務局

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不妊に大きく影響するのは以下の3つのポイントです。

  • 女性の年齢
  • 精液検査の結果
  • 子宮卵管造影検査

女性の年齢

妊娠には女性の年齢が大きく影響します。自然妊娠の場合には32歳前後、体外受精のような高度不妊治療を受ける場合には35歳前後がひとつのターニングポイントとなると考える医師が多いです。

そのため、不妊検査で大きな問題がなく、早急に高度不妊治療を受けたいという希望がなければ、女性が32歳未満の場合には半年~1年程度は排卵誘発剤を投与し、卵胞の状態を確認しながらタイミング法や人工授精を行います。

精液検査の結果

精液検査には2種類あります。ひとつめは性交後6~12時間以内に女性の頸管粘液を調べることで運動精子の数を調べるフーナー検査です。もうひとつはマスターベーションによって容器に採精し、精子の量や濃度、運動数、奇形率などを調べる検査です。

精子所見の結果によって、タイミング法で妊娠が可能か、人工授精が必要か、もしくは体外受精でないと妊娠が難しいか、などを判別することが可能です。

子宮卵管造影検査

子宮卵管造影検査では、卵管の通過性や子宮の形態を確認することができます。

通常、排卵した卵子は卵管の中で精子と出会い、受精し、分割しながら子宮内膜に進んできます。卵管は左右にひとつずつあるため、片方が癒着していても自然妊娠は可能です。しかし、両方の卵管が癒着している場合には自然妊娠はできないため、高度不妊治療が必要となります。

軽度の癒着や卵管が狭く通りにくい卵管狭窄の場合には、造影検査で造影剤を通すことで改善されることもあります。

初期の検査で骨盤内癒着が見られた場合や、女性の年齢が32歳未満で男性の精子所見に問題がないのにタイミング法でなかなか妊娠しない場合などに検査が行われます。

治療方針は定期的に見直される

不妊治療にはまだ解明されていないことも多いため、治療方針は定期的に見直されます。女性の年齢が32歳未満であれば約半年を目安に、37歳以上ではさらに短いサイクルで方針を見直します。また、精子所見も体調などによって左右されやすいため、一定の期間で検査をし直すこともあります。

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  • プレコンセプションケア

もしかして、不妊?医療の力を借りて妊活する前にやっておきたい4つのこと

2022/11/04

Marbera運営事務局

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もしかすると、不妊かも…?と頭をよぎったら、まずは何から始めますか?

「婦人科に行って検査を受けて、保険診療になったから不妊治療受ければ問題ないね。」そう思い動き出す方、

「本当に不妊症だったらどうしよう。婦人科なんて怖くていきたくない。」そう思い、悩み苦しんで動けない方もいると思います。

しかし、不妊検査、不妊治療を受ける前に、まずは自身やご家族で計画を立てることで、余計なストレスが軽減されます。

今回はその計画について4つ、お伝えしていきます。

 

1、夫婦の考えをしっかり話し合う

「赤ちゃんがほしい」そう思う気持ちは、お互い一緒だと思っていませんか?

結婚を意識した頃に、「子どもは、2人はほしいな。」「男の子と女の子一人ずつで最初は女の子。」なんて会話をしながら、お互いの気持ちを確かめ合いましたよね。

これからの未来に夢を描き、ワクワクドキドキ胸を高鳴らせながらお話をしていたのではないでしょうか。

もちろん、その気持ちはとっても大切で、夫婦としての絆の始まりです。

二人の愛が変わらないよう、ずっとその気持ちを持っていてほしいもの。

しかし、現実的な問題として「赤ちゃんがほしい」という思いがあれば、必ずしも二人のもとにやって来てくれるわけではありません。そこには現実的な問題として、年齢的なことが一番に関係してくるかもしれません。

二人にとっての「子どもを持つ意味、理由」を話し合いましょう。

10組の夫婦がいれば、10組ともその意味や理由は違うと思います。

例えば、「自分は一人っ子だから、少なくても子どもは二人欲しい」という考え方や、「名を絶やさぬよう男の子は必要」という方もいるでしょう。

お互いの気持ちを正直に話し、今後の2人の生活に「子ども」がどういう位置にいるのが望ましいのかを確認し合いましょう。

簡単にいうと、「どんなに大変な治療でも子どもは絶対ほしい」「治療は〇回までがんばってダメなら二人の生活」「治療してまで子どもは望まないので自然に任せる」など、具体的に考えた方がいいです。

もちろん、人の考えはずっと同じではないし、状況で変更せざるを得ない場合もあります。

その時々で変わることは当然ですし、変わってもいいのです。

その度に、カップル・夫婦会議を開いて、話し合っていける関係性を築いてほしいと思います。

まずはしっかりと向き合い、そこから次のステップを考えていく事をお勧めします。

2、不妊検査、治療はどこまでするかを決める

治療や検査については様々な方法があります。あなたの家庭の状況に合わせ「どうするのが一番良い」のかを考えましょう。

今、保険適用で不妊治療も受けやすくなったのは事実です。

例えば、これまで1回の体外受精(採卵まで)に約40~50万円はかかっていましたが、保険適用となり、約8~9万円くらいと、以前に比べると、かなり身近な治療となりました。(ART管理料、2~5個での採卵・受精・培養・胚凍結までで計算しております。)こちらには、卵巣刺激をするお薬代は入っておりませんので、もう少し追加料金はあります。

あなたの年齢による妊娠率も大事な治療選択のポイントですが、家庭の経済状況、共働きの方の場合、〇月は決算期ではないので仕事を休みやすいなど、仕事によっての特性もあるのではないでしょうか。

また、会社で休暇制度を使えるかどうかなども調べた上で、どの時期にするのか、どの治療までステップアップするのか、何回までするのかをある程度決めておくといいでしょう。

3、基本的な体のメンテナンスをする

お子さんを望んだ場合、先述した1,2と同時に、夫婦の体のメンテナンスをしましょう。

「毎年の健康診断では特に異常はないけど。」という方でも、実はBMI(体格指数)が肥満判定ギリギリの24.8だったり、逆に、17.8で痩せすぎという方もいらっしゃいます。

また、毎日の食事がコンビニやスーパーで買ってきたお惣菜という方も。

さらに仕事のストレス解消に、毎晩夜更かしをして映画鑑賞を趣味にされている方もです。

たまに、それらを利用することや、ストレス解消のひとつに実施するのは問題ありませんが、継続的にされることで、見えない異変が起きてくる可能性はあります。

体調を整えることは、卵子や精子という細胞を元気にし、妊娠しやすい土台作りです。

検査・治療と同時に生活習慣も整えていきましょう!

4、あたなに合った病院選びをする

不妊治療やクリニックの他に、女性の場合は婦人科ですし、男性の場合は泌尿器科になるのですが、全ての医師が不妊治療を得意としている訳ではありません。

日本では、日本生殖医学会の認定する生殖医療、いわゆる不妊治療を専門として認定を受けている医師、生殖医療専門医が全国におります。

病院だけではなく、ご自身でクリニックを開業されている医師もおります。

治療を受けようとしている方の全体をみて、自分で可能な治療を

患者さんと一緒に相談し、年齢や既往歴なども考慮しながら進めていきます。

過去に出会った方にこのような方がおりました。


通院した病院では、人工授精までしかできないことを知らず、勧められるまま治療を続けた結果、1年半くらい経過。

その後、高度生殖医療を勧められ転院。

AMH(抗ミュラー管ホルモン)検査で卵巣予備能を確認しておらず、転院先で実施したところ、数値はすでに0代

緊急で高度生殖医療を実施するが、妊娠には至らず。


最先端の医療がすべてではありませんが、状況に応じて、もう少し早く転院を進めていれば、もしかしたら結果が違ったのでないかと悔やんだ記憶があります。

幸い保険適用になり、一般不妊治療においても計画書を作成して、ステップアップも適切な時期に提案していけるようになりました。

その辺も考慮しながら、あなたの年齢、提供している医療技術、通院しやすさ、相性などを考慮し病院を選んでいくといいでしょう。

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